<インド・炭鉱>働く少女 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
燃える石炭からもうもうと煙の上がる空き地で、一人の少女が、石炭を運ぶ手伝いをしていた。みたところ6、7歳か、もっと幼いかもしれない。顔も服も煤で染まって真っ黒だ。同じ年頃の子供達はみな近くの原っぱで遊んでいたので、親に言われて無理やり働かされているのだろうと思ったが、必ずしもそういうわけではなさそうだ。一緒に働く老婆が、少女の頭に彼女の頭ほどある石炭の塊を乗せようとしたときだった。少女は、運べるから、もっと大きいのを乗せてくれ、と言い出したのだ。まるで「私はもう一人前よ」とでも主張するかのように…。
普通に考えれば、まさに児童労働と糾弾されるべき光景だろう。岩に寄りかかりひと休みする彼女の汚れきった幼い顔を見て、僕も胸もぐいと締め付けられるような気分になった。それでも炭鉱地に限らず、貧しい田舎部では、彼女のように働く子供達の姿を見かけることは珍しくはない。 これもまたインド発展の陰に潜む現実のひとつなのだ。 (2014年12月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.