ボルボ EX30が持つプレミアムの新たな基準とは。北欧を中心に広まる価値観が日本上陸【試乗】
あえて強調する、リサイクル部品らしさ
こうした潮流を積極的に取り入れて循環型ビジネスの構築を目指す自動車メーカーが北欧のプレミアムカーブランドであるボルボであり、またこの姿勢を最も強く表現されているのが2023年11月に日本での販売もスタートした最新コンパクトEV「EX30」だ。EX30に使用されているアルミニウムのうち25%が、スチールのうち17%が、プラスチックのうち17%がリサイクル素材で構成されているという。 インナードアハンドルのアルミニウムであったり、再生PETを採用したシート生地、廃棄漁網から再生されたフロアマットなど、一見してリサイクル素材だと気づかないパーツもある一方で、あえてドライバーの目につくコクピットに、これを強調するようデザインされているパーツがある。 今回の試乗車である「EX30 ウルトラ シングルモーター(インテリアカラー:ブリーズ)」の前後席のドアトリムからダッシュボードまでをぐるりと巡らせたパネルには、いかにもリサイクル素材らしいカラフルな粒子を散りばめた面「パーティクルデコレーション」が広がっている。 グレーのパネルの中にある白、黒、青、黄色の粒子は廃棄された塩ビ(塩化ビニル)やプラスチックを粉砕したもので、混ぜることで夜空の星のような模様を作り出しているのという。「リサイクル品=プレミアム」という価値観をデザインに落とし込んで組み込んでおり、これをクルマの個性のひとつとして捉えると興味深い。 今の日本で一般的に浸透している価値観とは言えないが、北欧車らしい先進性や環境性を備えたEX30でドライブしていると車窓からの景色も少し違って見えるような気もする。
EX30の安定性と快適性とスポーティネスと
EX30の全長は4235mmとボルボのSUVとしてはもっとも短いコンパクトさで、国産車でいえばトヨタ ヤリスクロス(4180mm)やレクサス LBX(4190mm)、ホンダ WR-V(4325mm)に近い数値だ。 全幅こそ1835mmと少し広めなので注意も必要だが、メーターディスプレイを運転席前面に設けないフードレスのデザイン、そしてハンドル上部と下部をおよそ水平にしたシェイプハンドルにより前方視界は良いし、フレームレス構造のドアミラーはコンパクトで死角を小さくする一助になっているようにも感じられる。 縦型の12.3インチセンターディスプレイには、ボディ前後左右にあるカメラからの映像を合成することでリアビューやサイドビューだけでなく、真上から、前方からなど多方面からクルマを見たときの状況を映像として確認することもできる。試乗中に道順を誤って歩行者の行き交う狭い路地に入り込んでしまったとき、スルスルと抜け出せたのもこうした機能性あってのことだろう。ちなみに、シフトポジションや速度計、バッテリー残量&走行可能距離などのインフォメーションもこのディスプレイの上段に表示される。 こうした運転のしやすさに加えてドライブの楽しさも持ち合わせているのがEX30だ。ガソリンエンジン車とEVの共有プラットフォーム「CMA」を採用したXC40やC40とは違い、EX30はボルボ初のEV専用プラットフォーム「SEA」を採用している。これはボディ中央の床下に駆動用バッテリーを搭載するEVのために開発されたもので、EVにより適したボディ剛性を実現している。 プラットフォームだけでなく駆動用バッテリーも進化していて、容量は69kWhでCMAのEVに搭載するものと同じだが、重量は約60kgも軽量化(450kg→390kg)しているのだ。コンパクトなボディサイズであることも要素のひとつだが、車両重量はXC40より200kg以上軽い1790kgとなっている。乗員保護を命題とするボルボ独自の、ボロンスチール(ウルトラ高張力鋼)でキャビンを囲うように配置するボディ構成を変えることなく、軽量化を果たしたのだ。 こうした進化もあって満充電での走行可能距離は560km(WLTCモード)を実現しているのと同時に、運転することの楽しさも味わわせてくれる。後輪軸に配置された200kW(272ps)/343Nmのモーターによる0→100km/h加速5.3秒という性能もさることながら、ガッチリとしたボディとしなやかな足回りのコンビネーションは直進でもコーナリングでも安心感と快適性、そして楽しさをも提供してくれる。 試乗前に想像していたよりスポーティさを感じる走り味だったこともあり、従来からのボルボらしさは?と聞かれると、ちょっと薄味だったようにも感じられた。実はこれには理由があり、試乗車のホイール&タイヤは標準装備の19インチ&245/45R19ではなく、オプション設定されている20インチ&245/40R20を装着していたことも要因のようだ。デザイン的要素も含めると、どちらにするか好みが分かれる選択となりそうだ。