【投資のギモンQ&A】新NISAの成長投資枠で、株式やJ-REIT(不動産投資信託)に投資してもいいですか?
コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。『新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編として、なかのアセットマネジメント 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁) 【この記事の画像を見る】 ――新NISAの成長投資枠で、株式やJ-REIT(不動産投資信託)に投資してもいいですか? 中野 まず、現物株式についてはくれぐれも慎重に考えてください。投資信託は長期の資産形成に寄与する、素的な仕組みだと思います。 しかし、現物株式への直接投資は、短期で売買する人たちに損益が大きく左右されるため、無用なストレスを抱え込むことになります。 現物株式を買う時には、自分がよほど応援したいと思える会社の場合に限定しておくことをお勧めします。 J-REIT(不動産投資信託)はいいと思います。J-REITの良さは、安定した分配金利回りが確保できる点といってもいいでしょう。 2024年4月18日時点の分配金利回りは、上場全銘柄の平均で年4.48%もありますし、個別で見ると、最も高いものが年5.48%で、それ以外に年5%超の分配金利回りが得られる銘柄だけでも12銘柄あります。 ただし、J-REITを組み入れた投資信託は買わないほうがいいでしょう。もっとも、J-REITを組み入れて運用する投資信託の大半が毎月分配型なので、成長投資枠で買うのが認められていません。 ● J-REITを組み入れた投資信託は、 買わないことをお勧めします したがって、成長投資枠で積極的にJ-REITを組み入れた投資信託を買うことは、ほぼないと思われますが、J-REITは買っても、J-REITを組み入れた投資信託は、買わないことをお勧めします。 最大の理由は、コストが高いからです。J-REITを直接購入すれば、信託報酬を取られることもありませんし、売買する際の手数料も、基本的に株式と同じですから、インターネット証券会社経由で売買すれば、極めて低廉なコストで保有できます。 ところが、J-REITを組み入れて運用する投資信託の場合、購入時手数料が取られるのに加え、年間の信託報酬も掛ってきます。これらのコストを負担すると、J-REITに直接投資したほうが有利です。 とはいえ、長期的な資産形成を前提にして成長投資枠を使おうとした場合は、やはりJ-REITのみで埋めるのは望ましくありません。J-REITは、あくまでも分配金というキャッシュフローを安定的に得るためのツールであり、資産を長期的に成長させるには十分ではないからです。 ● 「長期的に資産を成長させる」なら、 バランス型ファンドについても一考を したがって、成長投資枠を使って長期的に資産を成長させようと思うなら、やはり投資信託を用いるのが最も合理的ということになります。 また、「長期的に資産を成長させる」という点にフォーカスするなら、バランス型ファンドについても良く考えたほうがいいでしょう。 何しろ今のNISAは制度が恒久化され、かつ非課税期間が無期限になったので、基準価額の値下がりリスクに対して、必要以上に神経をとがらせることもありません。成長投資枠で購入する投資信託は、株式を100%組み入れる積極運用型のものでいいと思います。 【答え】 新NISAの成長投資枠を使って長期的に資産を成長させようと思うなら、やはり投資信託を用いるのが最も合理的。 中野晴啓(なかの・はるひろ) なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。 2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。 全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。 著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。 なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/
中野晴啓
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