読書家ランナー・田中希実の思考力とケニア合宿で見つけた原点。父・健智さんが期待する「想像もつかない結末」
コーチとして向き合って学んだこと「どんな歳になっても成長を続けたい」
――父として、コーチとしても希実さんと日々向き合ってきた中で、逆にご自身が学んだとお感じになることはありますか? 田中:いろいろな局面でぶつかることが多いので、自分もまだまだだな、と思うことは多いですね。その中で、「生きている以上、ずっと学ぶことばかりなんだな」と感じます。「どんな歳になっても成長を続けたい」という思いを持たせてもらえていることはありがたいことだと思います。 ――意見や考えがぶつかった時には、どちらが先に折れることが多いのでしょうか? 田中:お互いに頑固なので、どちらかが先に折れることはほぼないですね(苦笑)。周りの人を介して結論が出ることもあります。ただ、ぶつかった時にはちょっとした問題提起をして、本人に時間を与えて考えてもらうようにしています。 ――希実さんも、インタビューなどでは折に触れて健智さんへの感謝の思いを伝えていますね。改めて、これまで臨んできたレースで、一番忘れられないレースはどのレースでしたか? 田中:さまざまな草レースも含めて、すべてのレースが自分にとっては一番というぐらい価値があるものでした。おそらく皆さんは東京五輪で8位に入賞した1500mと考えるかもしれませんが、例えば、世界陸上(日本人選手として26年ぶりとなる8位入賞)や、ブリュッセルで走った5000m(ダイヤモンドリーグで日本記録を更新)も忘れられません。ただ、そういうレースも含めて自分たちは通過点と捉えていますし、多分本人が引退するときまでベストレースは出ないんじゃないかなと。そういう意味で、勝って負けても、タイムが悪い時も良かったことも含めて、すべてに意味があるレースだったと思います。 ――今年はパリ五輪、そして来年は世界陸上が東京で開催されます。希実選手への注目や期待もますます高まると思いますが、希実さんに伝えたいエールの言葉をお願いします。 田中:本人が求めていることに対して同じ方向を見ながら、寄り添うというよりも、チーム全員が横並びで一緒に進んでいくよ、という思いです。だから、本人が「1500mと5000mの2種目で決勝に残ること、できれば2種目とも入賞以上の結果を残したい」と言っていることに対して、一緒にブレずに向かっていきたいなと思っています。 <了>