【ネタバレ】ほぼ原作通りの映画『ルックバック』が独自に描いた「その先」とは
アシスタントへのリスペクトもあった
※この記事では原作マンガおよび映画『ルックバック』のネタバレに触れております。ご注意の上お読みください。 【画像】え…っ? 「映画観た後だと涙が…」 これが『ルックバック』藤野と京本が描いていた「4コママンガ」です(3枚) 2024年6月28日より公開中の劇場アニメ『ルックバック』(原作:藤本タツキ)は、原作そのままの絵が躍動感たっぷりに動くアニメのクオリティ、ふたりの主人公の声を務めた河合優実さんと吉田美月喜さんの表現力のほか、「エンドロール」の演出にも絶賛が集まってます。 エンドロールが強制的にスキップされない、他の観客と一緒に「同じ場所を見続ける」環境が用意された、「映画館」で見てほしい理由もそこにあるのです。 ●タイトルの意味を「一日中」描いた 雑誌「SWITCH」7月号のインタビューでは、原作者の藤本先生が『ルックバック』のタイトルには「背中を見る」「過去を振り返る」の他に「背景を見てほしい」という意味があったことを踏まえつつ、監督を務めた押山清高さんへの尊敬と信頼、そして「描いている背中だけをずっと見せることで単調さを表したかった」ことを語っています。 マンガを描くことは、確かに「ずっと机に向かって淡々と描く」地味な作業でしょう。原作マンガでも、作業中の主人公「藤野」を後ろから見たコマがいくつもありました。そして、実際に、このエンドロールでは、主人公の藤野の背中を映してばかりで、彼女はほとんど動いていません。 しかし、その外の風景は「朝から夜」へと時間が移り変わりました。原作のラストでは藤野の作業場の窓から見える景色は、まだ昼間のように見えます。主題歌「Light song」が重なり、藤野が「一日中」ひたすらに机に向かい続ける光景は、とても美しく感じました。原作ではラスト1ページ、一枚絵で示された「マンガを描き続けることを決意した藤野」を、時間の流れのある映像作品で描いたことに、まず意義があるといえるでしょう。 また、藤本先生は前述のインタビューで、「『チェンソーマン』や『ファイアパンチ』でアシスタントに入ってくれた人たちが描いた背景が本当に上手かったから、皆へのリスペクトも込めたい」思いも語っていました。その美しい背景をアニメで描き起こしたことはもちろん、時間の移り変わりをもって表現したのは、そのリスペクトという言葉でも足りない、愛情とさえ感じられます。 また、作中で美大に進学する前のもうひとりの主人公「京本」は、藤野のマンガの背景を描いていたアシスタントの立場でもありました。前述した通り、エンドロールの時間が移り変わる背景は、藤本先生からのアシスタントへのリスペクトが込められていると同時に、劇中の藤野から京本への(または京本から藤野への)愛情も示していると思うのです。