谷川さん作詞 感謝の校歌 大洗南小、元気な声響く 茨城県内で交流、人柄しのぶ
戦後日本を代表する詩人、谷川俊太郎さんの訃報が伝わった19日、茨城県内でも追悼の声が相次いだ。谷川さんは同県内で複数の校歌を作詞しており、多くの子どもや卒業生に広く親しまれている。交流のあった人たちは「優しかった」「悲しすぎる」などと人柄をしのんだ。 ■未来への希望 学校統合により2016年に開校した大洗町立南小(同町大貫町)の校歌は、谷川さんが作詞した。当時の町長らが知人を通じ、依頼したという。開校前の発表会には、作曲を担当した音楽家の池辺晋一郎さん(81)=水戸市出身=と共に出席した。「心の水平線を超えて」「大洗の空は宇宙へと開いている」といった歌詞には、大洗の自然の豊かさや未来への希望が込められる。 児童らは19日、訃報を受けた全校集会で、谷川さんへ感謝の気持ちを込め、元気な声で校歌を響かせた。「おしゃれな感じで好き」と、6年生の平間琴葉さん(12)。住谷駿さん(12)は「応援してくれるような歌。勉強が難しいと思う時に頑張れる」と話した。 ■雨情が大好き 08年2月、日立市内で、谷川さんを招いた講演会が開かれた。国民的詩人を見ようと、あふれるほど人が集まったという。当時、企画した県県北生涯学習センターのセンター長を務めていた野口不二子さん(82)は「ひょうひょうとしていて、優しく、気さくな人だった」と印象を語る。高校生との詩作の交流も行い「子どもたちにとって忘れられない時間になった」。 不二子さんは北茨城市出身の童謡詩人、野口雨情の孫。そのことを打ち明けると、谷川さんは「雨情さん、大好きなんだよ」と言ったという。講演後、同市の雨情生家や磯原海岸を案内した。歩きながらも、谷川さんの頭の中で言葉が生まれるようで、「ポロっと言葉が出て、ノートに書いていた。本物の詩人」と振り返った。 ■悠々と自然に 笠間市笠間の陶芸家、山路和夫さん(75)は、半世紀にわたり谷川さんと交流を続けた。訃報に接し「兄のように慕っていた。こんなに悲しいことはない」と声を詰まらせた。 交流は、谷川さんの父で哲学者、美術評論家の徹三さん(1895~1989年)と知り合ったのをきっかけに始まった。 2016年に個展を開いた際は、谷川さんから「器」と題した書き下ろしの詩が寄せられた。最後に会ったのは18年ごろ。都内の自宅を訪れた。そこで谷川さんが話した「悠々と自然に生きよう」という言葉を覚えている。山路さんは「自然体で生きるのが難しい、息苦しい世の中だからこそおっしゃったと思う」と振り返る。一つ一つの作品に感銘を受けてきた山路さん。「俊太郎さんの言葉は永遠に続く」としのんだ。
茨城新聞社