都の「スクールカウンセラー雇い止め」に波紋、学校における子どもの継続支援に必要な視点
「東京都のSC不再任問題」の衝撃と曲解
課題は配置状況だけではない。2024年3月、東京都ではSCの不再任問題が浮上した。2020年度から東京都のSCは、1年ごとに任用される会計年度任用職員として採用されている。それ以前から務めていて契約更新の上限に達したSCは、継続して働くためには公募試験に合格しなければいけなくなったが、契約更新を希望した250人ものSCが再任用されない、いわゆる雇い止めにあった。実績のあるSCが多く含まれ、採用基準も不透明なことなどから、波紋を呼んでいる。 「私の周りでも、再任用を認められなかったベテランSCの方々がいます。学校の管理職が『なぜこの人が不再任なのですか』と都に問い合わせたケースもあったと聞きます。こうした突然の不再任が起きると、それまで担当していた子どもにも関われなくなり、SC自身の人生設計も崩れてしまいます。会計年度任用職員制度はSCに限らない雇用形態であり、国が決めた制度ですから、SCだけを特別扱いできないのは理解できます。しかし、行政から不再任の可能性を事前に丁寧に説明していただいていれば、衝撃はもう少し抑えられたのではないでしょうか」 石川氏は日本公認心理師協会理事と教育分野委員長を務めており、「ほかの職種の中には『SC事業は縮小される』『SC事業は今後、若手だけで運用される』と曲解される方もおり、職能団体としても、この制度を十分理解したうえでどう対応すべきか、きちんと会員や各所に説明できていたらという反省があります」と話す。 しかし、制度についての理解が進んだとしても、今のままでは子どもたちへの支援の継続性については問題が残る。日本公認心理師協会では、今回の不再任問題を「東京都だけの問題ではない」として、子どもたちが安心して学校生活を送れるよう、SCを複数年継続して雇用することを国と自治体に求める声明を発表した。 「昨年12月の総務省による『会計年度任用職員制度の適正な運用等について(通知)』には、再度の任用は『各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、適切に対応いただきたいこと』とあり、任期の設定は自治体が適切に判断するものと解釈できます。また、『結果として複数回の任用が繰り返された後に、再度の任用を行わないこととする場合には、事前に十分な説明を行う』とも書かれています。今回私たちは、東京都のSC不再任問題が前例となって地方にも同様の事態が広がることを懸念しており、声明を出しました。雇用形態については、子どもたちへの支援の継続性を考慮した見直しが必要ではないでしょうか」