想像力が豊かな子なら、時間を忘れて夢中になる…16世紀の「ことわざ名画」で学ぶ"作文ドリル"
わが子の「非認知能力」を伸ばすには、どうすればいいのか。イデア国語教室を主宰する久松由理さんは「私の教室では十数年前から、アメリカやイギリスの母国語教育を手本に、読書と作文、アートや哲学を使った観察作文を実践しています。これをやれば、非認知能力をぐんぐん伸ばすことができます」という――。 【写真】『ネーデルラントの諺』ピーテル・ブリューゲル(父)、1559年、ベルリン美術館絵画館蔵に番号等を追加 ※本稿は久松由理『10歳からの考える力を伸ばす 名画で学ぶ作文ドリル』(かんき出版)の一部を再編集したものです。 ■AIに勝てる「人間ならではの能力」とは何か これまで日本の学校や進学塾では、知識を暗記する力や、解き方の定まった問題を効率的に解く力に長けた子を「優秀」と評価してきました。でも、こうした力は、もう人間がどう頑張ってもAI(人工知能)にかないません。これからは、AIに真似のできない、人間ならではの能力に磨(みが)きをかけた子が「優秀」と評される時代になるのです。 AIがどんなに発展してもカバーできない人間ならではの能力とは、共感力、想像力、創造性、コミュニケーション力、学ぶ意欲、人間性などの「非認知能力」とよばれる力。 これらの力は、私たちが豊かで幸せな人生を築くために欠かせない力として、世界で注目されています。日本でも近年、総合型選抜入試など「非認知能力」を含めて総合的に人物を評価する新しいスタイルの大学入試枠が急増し、重要視されるようになりました。 また、人々の価値観や社会システムが目まぐるしく変化する予測不能なこれからの時代を生きるには、「答えのない問いを考え抜く思考力」や「未知の状況に対処する判断力」、「自分の価値を言語化する表現力」といった「新学力」も、しっかり身につけておく必要があるでしょう。
■素晴らしい記述力が身につく思考問題 私の教室では十数年前から、アメリカやイギリスの母国語教育を手本に、読書と作文、哲学、アートを用いた新しい国語教育を実践してきました。このドリルには、教室生たちがアート鑑賞を楽しみながら「非認知能力」と「新学力」をぐんぐん伸ばし、素晴らしい記述力を手に入れてきたユニークな思考問題がつめこまれています。 計算や暗記の勉強ばかりしてきた人にとっては、慣れるまでちょっとむずかしく感じるドリルでしょう。一方、想像力豊かでクリエイティブな人にとっては、時間を忘れて夢中になれるドリルだと思います。 このドリルに挑戦すると、自分のお子さんが、あるいはみなさんご自身が、新時代の学力観にアップデートできているかどうかがはっきりとわかります。目先の偏差値や順位に一喜一憂する古い学力観を捨て去り、輝かしい未来を創る新しい時代の学びに全力で舵(かじ)を切っていただく、本書がそのきっかけとなれば幸いです。 次のページ以降で、入門編のドリルの一例を紹介いたします。ぜひお子様とご一緒に取り組んでみてください。 ---------- 問題を解(と)くときの注意点 1.書かれていることをきちんと読むこと 解説(かいせつ)や問題文をきちんと読まず、さっと作文問題だけを解いてしまうと、このドリルで身につけてほしい教養(きょうよう)や、文章を読む力が育ちません。書かれていることをすみずみまで読んでから問題にとりかかりましょう。 2.自分で答えを書く前に、作文例(れい)を見ないこと 先に作文例を見ると、どうしてもその答えを真似(まね)したり、意識(いしき)したりします。自分なりの作文が書けるまでじっくり考え、発想力や創造性(そうぞうせい)を伸(の)ばしましょう。 作文問題には、「これが正解!」という決まった答えがありません。そのためこのドリルでは、私の教え子が実際に書いた作文などを一例として載せています。お子さんが名画からどんなことを感じ、なにを考えたのかを言葉にできるよう、作文例を参考に導いてあげてください。 ----------