広島修道院のショートステイ専用部屋

　育児疲れや体調不良、出張時などに、子どもを泊まりで預けられる公的サービス「ショートステイ」の利用が、広島市で急増している。日数でみると、2023年度は1184日（速報値）となり、701日だった前年度の約1・7倍に膨らんだ。ニーズの高まりに伴い、市が受け入れ態勢を拡充したことが背景にあるようだ。広島県内では、積極的に利用を促進する自治体がある一方、制度の導入に至っていない市町もある。 【グラフで見る】広島県内での子どものショートステイ利用日数 　子どものショートステイは、国が補助する「子育て短期支援事業」の一つで、虐待防止につなげる目的もある。主な預け先は乳児院や児童養護施設。最大7日間を原則とする市町が目立ち、利用料は一日1人3千～5千円前後。ひとり親や生活保護世帯は減額や無料になることが多い。 　広島市では、20年度はコロナ禍の影響で利用日数が190日と落ち込んだが、21年度は375日と約2倍になり、その後も加速度的に増えている。 　市はニーズの高まりを受け、21年度に委託先の施設を1カ所追加。さらに22年度、広島修道院と広島乳児院（いずれも東区）にそれぞれ、ショートステイ専用の部屋を設けた。担当課は「依頼を断らずに済むよう態勢を拡充した」と話す。 　「すごく救われています」。時折、長男（3）を預ける市内の女性（35）は打ち明ける。夫婦そろって精神疾患があり、夫は仕事も休みがち。心配事が絶えない。「ずっと子どもと一緒にいるとどうしても息が詰まる。少し離れる時間があると、また頑張ろうと思えるんです」 　県内ではこの他16市町が同様のサービスを提供する。うち府中市、坂町など7市町は21年度以降に導入したばかりだ。地元に受け入れ施設がない自治体は、近隣市町の児童養護施設などに委託するという。さらに、三次市も24年度中の導入を予定する。 　施設での預かりが多い中、里親の自宅での受け入れを進める動きもある。呉市では22年度、県内でも最多の109日分の受け入れを里親が担った。利用者からは「地域の家庭に託すのは安心感が大きい」といった声も届いたという。この他、福山市や廿日市市、神石高原町なども里親を活用している。 　こうした動きもあり、県全体の22年度の利用日数は1450日。コロナ禍前の18年度（1064日）と比べても、3割強の増加となった。一方、竹原市、庄原市、江田島市、安芸太田町、大崎上島町の5市町は「受け入れ先がない」などとして制度を設けていない。