カントリー音楽が絶賛バズり中...大復活のカギはビヨンセ、「踊ってみた」、コロナ禍、Z世代
踊ってみた動画が大人気
カッサータいわく、カントリーの世界で人種差別、同性愛者差別、トランス差別が蔓延してきたのは、このジャンルを牛耳る「白人、異性愛、シスジェンダーの男性たち」の政治力が原因だ。 「このジャンルの音楽を作り、抑圧と偏見と憎悪を批判することは、とても大きな意味を持つ。抑圧者たちが自分たちのものだと誤って決め付けてきたジャンルを奪い返そうという試みだからだ」と、カッサータは言う。 「私たちの声を届ける必要がある。非常に人気の高い音楽ジャンルであるカントリーは、私たちの経験を伝えるための強力な手だてになる」 音楽団体アカデミー・オブ・カントリーミュージックのデーモン・ホワイトサイドCEOは、カントリー大復活の理由について持論を示す。 「今も昔もカントリーが愛されるのは、一流の楽曲とアーティストの音楽性、そして素直に共感できる歌詞のおかげだ」とホワイトサイドは言う。「カントリーが長年語り続けてきた素晴らしいストーリーが、幅広いオーディエンスの共感を呼んでいる」 さらにホワイトサイドは「超大物スターやソングライターがジャンルの壁を打ち破り、新鮮でダイナミックな楽曲を発表するようになったことで、カントリーはこれまでになく幅広い大衆に受け入れられている」と評価する。「伝統的な境界線は限りなく曖昧になった」 この点に気付いたアーティストの1人が、ブランコ・ブラウンだ。2019年のデビュー曲「ザ・ギット・アップ」は、「ツーステップ、次はカウボーイブーギー」というように、ダンスの振り付けが歌詞の大部分を占める。 ブラウンは公式ミュージックビデオ(MV)でも踊っており、レイニー・ウィルソンとペアで踊るダンスチャレンジMVも発表。これを機に、友達同士や学校や職場でのダンスチャレンジが爆発的に広がり、TikTokには13万件もの動画が投稿された。曲自体も、スポティファイでの再生回数が3億3000万回を超え、全米チャートで14位まで上昇する快挙となった。 「私の場合、カントリーに対する強い愛情が、トレーラートラップ(ヒップホップとカントリーをミックスした音楽スタイル)を始めるきっかけになった」とブラウンは語る。「私の曲をきっかけに、このジャンルに興味を持つ人が増えたことは最高の気分だ」 カントリーとそれ以外のジャンルを結ぶ「橋を渡る人が増えて、隔たりそのものがなくなり、誰もが古き良きカントリー音楽の心地よさを楽しむようになってきた」と、ブラウンは言う。そして新曲のタイトルに引っかけて、「さあ、カントリーに太陽の光を浴びせよう!」と笑った。