〈ウォルズ副大統領候補の実力は?〉売りは「中西部の気さくで平凡なアメリカ市民」、ハリスを後押しする訴求力とは
ウォルズ氏の〝弱点〟
ウォルズ氏に弱みがないわけではない。 その一つが軍歴をめぐるもので、共和党のJ.D.バンス副大統領候補は、ウォルズ氏が陸軍国家部隊に入隊中の2000年代初め、所属部隊のイラク派遣が決まった数カ月後に連邦下院議員選に出馬するため退役したことをやり玉に上げ、「彼は戦場で自分の部隊を見捨てた」と非難している。 また、ウォルズ氏については、ミネソタ州知事時代に、黒人差別に対する大規模抗議集会で一部が暴動化した際の対応をめぐり、共和党保守派グループから「鎮圧に毅然とした態度をとらなかった」との厳しい批判を浴びている。 しかし、全米有権者の間でのウォルツ氏に対する高い評価はその後も変わっておらず、最新のいくつかの世論調査でも、同氏が支持率でバンス氏を10%前後も上回っており、その差はさらに広がる勢いを見せている。
バンスへの風当たり
対照的なのが、バンス氏の不人気だ。 8月16日、ワシントン・ポスト紙がABCテレビと合同で実施した調査結果によると、バンス候補を「支持しない」と回答した人は42%だったのに対し、「支持する」はわずか30%にとどまっていることが分かった。 男女別のいずれの調査においても、不支持率が10%前後も上回っている。これまでの過激なタカ派的言動や女性蔑視発言に有権者の多くが幻滅しているとの指摘が相次いでいる。 こうしたことから、共和党議員の間でも、11月に向けたトランプ氏の選挙戦にとって「プラスになるどころか、足かせになっている」として、バンス氏を選んだトランプ氏にまで批判が向かいかけている。 従来、米大統領選において、副大統領候補に対する期待度は決して高くなかった。「勝敗を決めるのは所詮、大統領候補の資質そのものであり、歴代大統領候補は副大統領候補を選ぶ際、『選挙戦にマイナスにならない無難な人物』を重視してきた」との評価が定着してきた。 実際、トランプ氏も今回、副大統領候補の人選に関する事前のインタビューで「誰にするかは大した問題ではない。大統領候補がすべてだ」と答えたことがあった。ところが、実際はバンス氏を選んだとたん、急に世間の風当たりが強くなり、トランプ氏も当惑の色を隠せないでいる。 またそのせいか、トランプ氏が先月16日、全国党大会で共和党候補に正式指名されて以来、バンス氏と同じ遊説先で揃って演壇に立つ回数は今月に入り極端に少なってきており、もっぱら、地方遊説より単独の記者会見を通じ、得意のマイペースの毒舌に時間を割くことが増えつつある。民主党のハリス候補が遊説でウォルズ氏と行動を共にする機会が目立つのと好対照だ。