規正法改正、自民に「包囲網」 政活費、企業献金で野党攻勢 今国会成立見えず〔深層探訪〕
自民党の派閥裏金事件を受け、政治資金規正法改正に向けた国会論議が26日、本格化した。野党側は、政策活動費の廃止や企業・団体献金の禁止で足並みをそろえ、事件の真相解明も要求。いずれにも消極姿勢な自民は、早くも「包囲網」が敷かれた格好だ。与野党間の溝は深く、岸田文雄首相が掲げる今国会中の成立も、不透明感が増しつつある。 【図解】自民党の処分 ◇「立維共」足並み 「企業・団体にも政治活動の自由が認められていることを考慮すべきだ」。26日に初開催された衆院政治改革特別委員会で、自民の大野敬太郎氏は企業・団体献金の禁止論を念頭に、こう予防線を張った。使途公開が不要な政策活動費に関しても「政治団体の支出は公開になじまない部分がある」と現状維持の考えをにじませた。 自民内では、政策活動費や企業・団体献金の見直しについて「法改正で盛り込むのは無理だ」(党幹部)との意見が大勢。先にまとめた自民案も否定的なトーンで一貫している。 これに対し、立憲民主党の笠浩史氏は「小手先の見直しは許されない」と訴え、政策活動費について「裏金の温床だ」と廃止を求めた。日本維新の会の浦野靖人氏も「選挙などでの疑惑が絶えない」と同調。自民が1989年の政治改革大綱で政治資金の透明化を掲げたことに触れ、「(内容を)お忘れのようだ」と皮肉った。 企業・団体献金についても、笠、浦野両氏は「禁止」を主張。共産党の塩川鉄也氏も「選挙権を持たない企業の献金は、国民の参政権を侵害する」と厳しく批判し、政策活動費とともに「立維共」の足並みがそろう格好となった。 ◇「妥協せず」 対応に苦慮しているのは公明党だ。特別委では「一刻も早く民衆から遊離した政治を正す」と決意をアピール。政策活動費の使途公開などを訴えたが、26日の与党実務者協議でも進展はなく、「ボールは自民にある」(中堅)といら立ちを募らせる。 野党は、裏金事件を「令和のリクルート疑獄」と位置付け、森喜朗元首相の証人喚問などを要求。首相の地元・広島で開かれた就任祝賀会や、茂木敏充幹事長の政治団体間の資金移動も取り上げ、「『岸田方式』『茂木方式』の抜け道をふさぐ」(笠氏)と攻勢を強める。 笠氏は特別委の終了後、自民を除く与野党協議を提唱。「自民任せでは政治改革は絶対にできない」と断じた。 野党側の強気な姿勢は、首相が国会会期末の6月に衆院解散・総選挙を模索しているとの観測もくすぶる中、「政治改革に後ろ向きな自民」を印象付ける狙いもある。「世論の批判が強いのに、中途半端な案での妥協はマイナスしかない。折れる理由がない」。立民幹部は、規正法改正を巡る今後の国会論議で、一歩も引かない構えを示した。 立民の泉健太代表は26日の記者会見で「国民の望む改革案を通せば、(規正法改正の議論は)あっという間に終わる。野党案をのまないなら、自民が政治改革を骨抜きにしようとしているということだ」と迫った。