暴言騒動の森脇処分は灰色決着で良かったのか?
疑わしきは罰せず、という感は拭いえない。埼玉スタジアムで4日に行われたJ1の首位攻防戦、浦和レッズ対鹿島アントラーズで起こった小競り合いのなかで暴言を吐いたレッズのDF森脇良太が9日、Jリーグから2試合の出場停止処分を科された。 対象となるのは、14日のアルビレックス新潟戦(デンカビッグスワン)と20日の清水エスパルス戦(埼玉スタジアム)。処分の通達を受けて、レッズは公式ホームページに淵田敬三代表取締役社長と森脇の謝罪コメントを掲載。さいたま市内のクラブハウスでは森脇本人が取材に応じ、あらためて謝罪している。 問題の騒動が起こったのは、アントラーズの1点リードで迎えた後半33分過ぎだった。レッズ陣内の左コーナーフラッグ付近でボールをキープしようとするアントラーズのMF土居聖真に、レッズのDF槙野智章とFW興梠慎三が激しく体を寄せる。 松尾一主審が土居のファウルを宣告した直後に、興梠が土居を突き飛ばしたことで両チームの選手たちがエキサイト。アントラーズのMFレオ・シルバ、キャプテンのMF小笠原満男、FW金崎夢生、鈴木優磨が興梠に詰め寄るところへ、反対側の右サイドにいた森脇が遅れて駆けつけてきた。 その直後からレオ・シルバと小笠原が突然激昂。一触即発の状態となるなかで小笠原をレッズのGK西川周作が必死に制止し、森脇は味方のDF那須大亮から叱責されるように騒動の輪から引き離された。試合後の取材エリアで、小笠原は掴みかからんとばかりに激怒した理由をこう説明している。 「レッズの森脇選手がウチのレオ・シルバ選手に対して『くせえな、お前』という言葉を発したことが、どうしても許せなくて。立派な言葉の暴力だと思うし、差別ととらえられてもおかしくない」 続いて姿を現したレオ・シルバも「非常に悲しいこと」と神妙な表情を浮かべたが、森脇本人は差別的な言動は一切していないと全面否定する。もっとも、口論になった際に小笠原のツバが顔にかかったために、頭に血がのぼった末に「口が臭いんだよ」と言い放ったことは認めていた。 試合を監督するマッチコミッショナーの大澤隆氏は、両チームから事情を聞いたうえで報告書をJリーグに提出。これを受けたJリーグ規律委員会(石井茂巳委員長)が試合映像と合わせて検証し、7日には都内で森脇、小笠原に対して個別にヒアリングを実施していた。 規律委員会は日本サッカー協会(JFA)の競技及び競技会における懲罰基準に照らして審議を重ね、最終的に森脇の行為が「他の競技者、その他の競技に立ち会っている人々に対する侮辱」に相当すると判断。今回の処分を決めたが、森脇に「臭い」とされた対象が小笠原、レオ・シルバのどちらなのかは特定できなかったという。 つまり、森脇が「臭い」と言った事実は咎められたものの、小笠原が指摘した「差別」までは確認できなかったことになる。しかし、映像にはレオ・シルバに詰め寄った森脇が上げかけた右手を背後にいた那須が止めるように見えた不自然な瞬間が映っている。