暴言騒動の森脇処分は灰色決着で良かったのか?
疑いをもたれる状況がそろっている以上は、たとえば那須や、試合後に小笠原に対して「彼(森脇)はいつも僕に対してそういうことを言う」と、昨シーズンまで4年間プレーしていたアルビレックス時代でも同様の言動が繰り返されていたと明かしたレオ・シルバにも、真相解明のためのヒアリングを実施すべきだったのではないだろうか。 国際サッカー連盟(FIFA)は2013年5月の総会で、「反人種差別・差別に関する戦い」を決議。加盟する各国協会に対してガイドラインを提示し、これを受けたJFAも同年11月に規定を整備。Jクラブをはじめとする加盟団体に対しても周知徹底させている。 翌2014年3月8日に埼玉スタジアムで行われたレッズ対サガン鳥栖で、レッズのサポーターグループの一部男性が『JAPANESE ONLY』と書かれた横断幕を、ホーム側のゴール裏スタンドのゲート入り口に、ピッチとは反対方向へ向けて掲出した。 Jリーグ側は横断幕が「日本人以外お断り」を想起させる、差別的な行為であると認定。けん責と現時点でもJリーグ史上で唯一となる、無観客試合の開催という制裁措置をレッズに課した。不適切な横断幕の掲出を把握しながら撤去できなかったレッズに対しても、村井満チェアマンは「クラブ側も差別的な行為に加担したことになる」と厳しい態度を取っている。 さらには、2010年5月15日のベガルタ仙台戦で、元北朝鮮代表のMF梁勇基に対して数人のサポーターが人種差別的な発言を行い、けん責と制裁金500万円が科されていることもさかのぼって問題視。こうした体質が改善されなければ勝ち点の減免やJ2への強制降格も視野に入る、とまで村井チェアマンは踏み込んで言及している。 だからこそ、過去の事例と照らし合わせても、今回の処分決定に至るプロセスには中途半端な思いを禁じえない。スタジアムからの差別撲滅を至上命題として掲げている以上は、騒動を引き起こした真相がわからないままの灰色決着は、日本サッカー界全体のイメージをもダウンさせかねない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)