能登在住の千葉出身男性が珠洲焼の個展開催 南房総のギャラリー(千葉県)
佐原市(現香取市)出身で、石川県能登町在住の「珠洲焼」陶芸家、鈴木吉彦さん(77)の個展が、南房総市岩糸のギャラリーMOMOで開かれている。珠洲焼は石川の誇る伝統工芸品で、会場には花器や食器約150点が並ぶ。「故郷・千葉の人に珠洲焼をもっと知ってもらえたら、こんなにうれしいことはない」鈴木さん。開催は25日までで、18日までは鈴木さんが在席する。 珠洲焼は、平安時代後期から室町時代にかけて、現在の能登半島の先でつくられていた、中世日本を代表する焼き物の一つ。一度廃絶したが、1976年に珠洲市や地元商工会議所の努力で復興した。 釉薬(ゆうやく)を用いず、穴窯を使って酸素の少ない還元炎焼成という焼き方で、1200度以上の高温で焼き締めた後、窯の中を酸欠状態にして仕上げることで、珠洲の土に多く含まれる鉄分が、美しい黒色を発する。 鈴木さんは東京で小学校の教師として働く傍ら、陶芸にも打ち込み、退職を機に妻の故郷である能登町に移住した。工房「土幸(どこう)窯」を構え、珠洲焼を代表する作家として活動していたが、能登半島地震で被災。自宅は半壊、窯も煙突が曲がるなどしたが、半年かけて修理し、制作を再開した。ギャラリーMOMOのオーナー、間瀬藤江さんと親交があり、今回の個展開催につながった。 能登町の現状について鈴木さんは、「ライフラインは復旧したが、地域の被災した家の公費解体もまだ半ばで、空き地が増えていくばかりの毎日。復興はいつになったら始まるのか」と肩を落とす。しかし、これからも能登で暮らす気持ちは変わらない。「能登の空気と人が好き。私には合っている。地震で全国的に珠洲の名前が知られることになったが、珠洲焼を通して、珠洲のことを知ってもらえたらうれしい」と笑顔を見せる。 正午~午後5時。火、水、木曜は休廊。 問い合わせは、ギャラリーMOMO(0470・29・3995)へ。 (前木深音)