電動「Gクラス」の“格上の快適性”にメルセデス・ベンツ日本の社長も自信 “画期的な駆動システム”を搭載した新型「G580 EQテクノロジー」の実力とは
戦車のような華麗な360度ターンを披露した「G580」
メルセデス・ベンツ日本は2024年10月23日、メルセデス・ベンツが誇るリアルオフローダー「Gクラス」のBEV(電気自動車)仕様、「G580 ウィズEQテクノロジー(G580 with EQ Technology)」を日本初公開しました。 【画像】「えっ!…」これが戦車のような旋回もできるメルセデス・ベンツの電動「Gクラス」です(30枚以上) まずは導入記念モデルである「G580 ウィズEQテクノロジー エディションワン(G580 with EQ Technology Edition 1)」の受注が同日からスタート。価格は消費税込で2635万円となっています。
今回、「G580 ウィズEQテクノロジー」(以下、「G580」)が上陸したことにより、「Gクラス」はクリーンディーゼルエンジンを搭載した「G450d」と高性能モデルであるメルセデスAMG「G63」を合わせ、3タイプがラインナップされることになりました。 発表会では、オープニングで登場した「G580」が、その場で華麗な360度ターンを披露。完全電動駆動化が可能にした新機能“G-TURN”の威力を早速見せつけ、会場に集まった多くの人々をわかせました。 2024年9月にメルセデス・ベンツ日本の社長兼CEO(最高経営責任者)に就任したばかりのゲルティンガー剛氏は、「『G580』はノイズや振動が抑えられており非常に快適です。『Gクラス』伝統の日常性能とオフロード性能を両立したモデルであり、BEVの新しい可能性を示すモデルといえます」と、魅力的なBEVオフローダーに仕上がっていることをアピールしました。 「Gクラス」は1979年の誕生以来、頼りがいのあるタフなスタイリングと優れた悪路走破性を支えるラダーフレーム構造を守りつつ、時代の流れに合わせてブラッシュアップを繰り返してきました。 その歴史上、最大の改良となった2018年登場の現行型では、基本となるオフロード性能はもちろんのこと、快適性とオンロード性能が大幅に向上されています。 また2021年には、ドイツ・ミュンヘンで開かれた国際モーターショー「IAAモビリティショー2021」において、電動化戦略のひとつとしてBEVのコンセプトモデル「コンセプトEQG」を初披露。大きな話題を集めたのは記憶に新しいところです。 今回上陸した「G580」は、そんな「コンセプトEQG」の市販バージョンとなります。 「Gクラス」の一員であることが分かる「G580」というネーミングが示すように、そのビジュアルは他の「Gクラス」と共通のもの。 ボディサイズは、全長がわずかに拡大されているものの、全幅と全高は同等。その結果、全長4730mm、全幅1985mm、全高1990mmというスリーサイズとなりました。またホイールベースは、他の「Gクラス」と共通の2890mmとなっています。 加えて、コンセプトカーに採用されていたライティング機能つきのフロントグリルは、市販バージョンでは今後、オプション設定される予定ですが、標準仕様はエンジン車と共通のフロントグリルとなっています。 もちろん、エンジン車と差別化が図られている箇所もあります。 最も象徴的なのが、空力改善を目的に“段つき”となったボンネット。リアタイヤのフェンダーにも小さな空気導入口となるエアカーテンを追加するなど、各部で空力改善が図られています。 さらに、「Gクラス」のリアスタイルにおけるアイコンともいうべきタイヤケースは取り払われ、代わりにタイヤカバー風のロック機構つき収納ボックスを装着。本国仕様ではスペアタイヤも装着できますが、日本では収納ボックス仕様のみとなるようで、ここには普通充電ケーブルを収めることができます。 また細やかな点ですが、プロテクションモールにブルーのラインが取り入れられています。 インテリアのデザインもエンジン車と基本的には共通ですが、トリムにはシートを含め、ナッパレザーを贅沢に使用。シートやドアトリムなどのステッチにはブルーを使うことで、さり気なくBEVであることを主張します。 5人乗りとなるキャビン自体はエンジン車と同じで、ラゲッジスペースは1.5cmほどフロア面が高くなっているものの、荷室容量はエンジン車とほぼ同等となる620リットル~1990リットルを確保しています。 導入記念モデルである「エディションワン」は、特別装備としてスポーティな雰囲気を高める「AMGラインパッケージ」、ブラックペイントが施された専用の20インチAMGアルミホイール、ブルーのブレーキキャリパー、ブルーアクセントつき「AMGカーボンファイバーインテリアトリム」などがプラスされるなど、スタンダードモデルとの差別化が図られています。 ●悪路走行はエンジン車より快適、しかもラク そんな「G580」最大のポイントは、なんといっても電動パワートレインでしょう。 メルセデス・ベンツでは初となる4輪独立モーターを採用した駆動システムは、専用仕様のラダーフレームに収められた前後アクスルの左右輪それぞれに最高出力108kW(146.8ps)のモーターを装備。システム全体では最高出力435kW(587ps)、最大トルク1164Nmというパワフルさを誇ります。 それは、高性能仕様であるメルセデスAMG「G63」に搭載される4リッターV8ツインターボエンジン(最高出力585ps、最大トルク850Nm)さえ上回るものです。 もちろん、「G580」は自慢の悪路走破性の追求にも抜かりはありません。 それぞれのモーターに2速トランスミッションを備えることで、ローレンジを実現。さらに、トルクベクタリング機構を用いた仮想ディファレンシャルロックを採用しています。加えて、4輪独立モーターを駆使したオフロード上での新機能として、その場での旋回を可能とした“G-TURN”や、小回り性能を高める“G-STEERING”などが導入されています。 駆動用バッテリーは116kWhのリチウムイオンバッテリーを採用しており、航続可能距離530km(WLTCモード)とロングドライブを可能にしています。 充電システムは、最大6kWの200V普通充電に加えて、最大150kWのCHAdeMO式急速充電にも対応。例えば、150kW出力の急速充電器を利用すると、電池残量が10%の状態から80%まで回復するのに必要な時間は41分となっています。一般的な充電器使用時間である30分間では、10%から67%までの充電が可能です。 もちろん、フロア下に配置されるバッテリーは悪路走行時の安全性に対して最大限の配慮がなされています。強固なアンダーボディプロテクションが装着されており、いかなる状況下でもバッテリーを衝撃から守るよう設計。その検証も徹底しておこなわれているとのことです。 「Gクラス」のプロダクトマネージャーであるトニ・メンテル氏は、「エンジン車と全く変わらない性能を与えるだけでなく、同じオフロードコースを走る場合、『G580』の方がより快適かつラクに走破できます」と、BEV仕様の完成度に太鼓判を押しています。 ちなみに、発表会当日には、メルセデス・ベンツのBEVを所有する顧客の利便性向上を目的に、新たな充電ネットワーク構築に関する説明もおこなわれました。 それによると、蓄電池を用いた急速充電システムを提供するパワーエックス社との協業により、今後2年間で25拠点に合計100口の高出力充電ネットワークを独自開設していくとのこと。 具体的な場所などは明らかになっていませんが、大都市圏を中心とする商業施設などに1拠点当たり4口を基本とする公共の充電ステーションを展開していくようです。“公共”と銘打つだけあって、メルセデス・ベンツのBEVだけでなく他社製のBEVでも充電可能にするとのこと。そのため、BEVユーザー全体に大きなメリットをもたらすシステムといえるでしょう。 * * * 高級リアルオフローダーの頂点に君臨する「Gクラス」に新たに仲間入りしたBEV仕様の「G580」。長距離移動が多いユーザーは、手を出しにくいと感じる人も多いかもしれません。 しかし多くのユーザーは、高級SUVを都市部の移動に多用している現実もあります。そのため、自宅や自宅付近に充電環境を確保できるユーザーにとっては、環境負荷低減や優れた静粛性を高く評価する人もいるでしょう。BEV化によって新たな可能性を示した「G580」は、今後の動向に注目したい1台です。
大音安弘