90歳認知症初期の母と同居を始めて。冷蔵庫は腐った食材で満員御礼!無駄遣いをやめさせたいが、財布は絶対に渡してくれない
◆大量のクロワッサン ある日、老母が30個近く入ったチョコレートのクロワッサンを買って帰ってきた。 「こんなにたくさん、一体誰が食べるの?」 「私が食べる」 この日も老母は聞き飽きた台詞をしれっと繰り返す。そうですか。あなたが食べるんですか。でも、いつも食べきれずに捨ててますよね。と言いたいのは山々だが、言っても無駄なことくらいもうわかっている。 「一度に食べないのなら、冷凍保存しておけばいいんじゃないですか。ウチも週末に大量買いして冷凍しておきますよ」 なんて声が聞こえてきそうだが、「今日明日で食べきれない分は冷凍しておいたら」と、これまた何度言ったことだろう。 パンだけではない。うどんや白飯などの冷凍保存は今や常識だというのに、いくら説明しても、「何十年も台所仕事をしている私に向かって、お前は偉そうなんだよ」と、老母は頑固なまでに新しいやり方を受け入れようとしないのである。 十中八九このクロワッサンも、3週間ほど放置された後ゴミ箱行きとなるのだろうと思いながら、この日もまた私は見て見ぬ振りをする。 介護認定をおこなう自治体の「介護支援専門員」にこうした状況を伝えてはみるが、 「お財布の管理は娘さんがして、必要な金額だけ渡すようにしてはどうですか」 返ってくる答えは、まあ予想通り。ただ、すでにお察しの通り、それができれば、とっくのとうにそうしている。
◆神のみぞ知る 以前、自宅に集金に来た業者さんと、「払った、払っていない」でトラブルになったときも、事の真相を確かめるべく割って入った私に向かって、 「お前は関係ないんだから引っ込んでろ!」 目をつり上げて食って掛かってきたくらい気が強い人だ。 預貯金の管理を長男である兄に任せ、必要なときだけ下ろしてきてもらっている老父とは対照的に、老母は通帳も印鑑も、もちろん財布も、私たちには一切触らせようとはせず、這ってでも近くのATMに自分でお金を下ろしに行く。 これからさらに老いが進み、外出が困難になったとき、施設に入るようなことになったとき。この人は、私たちに通帳と印鑑を渡すのだろうか……。 まさに神のみぞ知る。 まあ、居候の私が心配することではないんですけどね。 ※本稿は、『寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。
こかじさら
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