医師との二刀流。山本悠太郎[タッチラグビーW杯・日本代表]
さしずめタッチラグビー界の福岡堅樹だ。 山本悠太郎は7月16日からイングランドのノッティンガムでおこなわれているタッチラグビーW杯2024(第10回)に、日本代表として参戦している。 普段は自衛隊中央病院の救急科で研修医として勤務。タッチラグビーと医者の二足の草鞋を履く。 山本は元ラグビーマンだ。小学1年から宝塚ラグビースクール(以下、RS)で楕円球を追った。ポジションはずっとWTBかFBだった。 1学年下にはクボタスピアーズ船橋・東京ベイの木田晴斗がいた。 「根塚(洸雅)とは同期で、彼は尼崎RSだったので何度も試合をしました。古賀(由教)も芦屋RSなので試合をしたことがあります」 中学3年時は吹田RSに2点差で敗れ、太陽生命カップ出場をあと一歩で逃した。 高校はSCIXラグビークラブに所属。中学受験で入学した洛南高校はラグビー部がなかった。 3年時には歴史を作る。全国7人制大会の県予選、予選プールで関西学院を破り、決勝トーナメントに進んだ。 「ただ僕たちは人数が少ないので、最後は力尽きました。準決勝で負けました」 タッチラグビーとの出会いは、防衛医大に学んだ3年時。同大ラグビー部に所属し、関東大学ラグビーオールスターゲームにも医歯薬リーグ選抜の一員として出場していたが、幼少期からの強い思いがあった。 「何かスポーツで一番になりたいという気持ちがずっとありました。ラグビーは小1の頃からずっとやってましたし、木田とかを見ているとプロにはなれないのだろうなとも思っていて、違うスポーツもやってみたいなと」
その時にSNSで偶然見かけたのが、タッチラグビーの映像だった。現在も所属している社会人チーム「東京タッチジャンキーズ」の体験会の案内を見つけ、縁もゆかりもないクラブに足を運んだ。 「日本代表は前回(2019年)のW杯で銅メダルを獲っていて、しかもマイナー競技なので他のスポーツよりは上を目指しやすい。タッチラグビーはラグビーのFWみたいな大きさは必要ないので、頑張ればいけるのではと思いました」 ただ、始めるとすぐに「ラグビーとは似てるようで全然違う」と気づく。 「最初は全然通用しなくて、びっくりしました。一番の違いはディフェンス。タッチでは後ろ向きに走りながら守ります。使う筋肉が全然違くて、始めたての頃はふくらはぎとか太ももの裏をよく攣っていました。スピード感はセブンズぐらいありますが、タッチは触れられてはいけないので間合いも全然違います」 本格的に代表を目指し始めてからは病院実習も始まり、ラグビー部での活動も兼任していたから多忙を極めた。 それでも活力にみなぎっていたのは、「日本代表を目指せる環境にいた」からだ。 「東京タッチジャンキーズには日本代表の方が何人もいました。日本でトップを走っている人たちに学べる機会が毎週あるというのはすごく貴重で、努力すれば自分も日本代表になれるという指標が近くに何人もいたというのが大きなモチベーションになりました」 タッチラグビーの魅力に気づき、より多くの人に体験してほしいと願う。 「全国に草タッチラグビーチームは結構多いんです。女性でも気軽にできますし、年配の方でも安全にできる。老若男女誰でも楽しめるところを魅力に、広めていきたいと思っています」 「まずは知らない人がめちゃくちゃ多いと感じるので、ラグビー経験者に知っていただきたいです。東芝のニコラス・マクカランもNZ代表でW杯に出ていたはずですし、(リッチー)モウンガもタッチラグビーをやっていたとインタビューで見たことがあります」
追い風となりそうなのは、2032年にオーストラリアで開催されるブリスベンオリンピックで、タッチラグビーが初めて競技に加わる可能性が高いのだ。 オーストラリアはタッチラグビーで男女ともにW杯第1回大会から負けなし。9連覇を誇っている。 「僕は33歳になるので頑張れば出場したいですし、選手として難しければチームドクターとして帯同したいです」 今大会の日本代表はプール戦を勝ち抜き、決勝トーナメント進出を果たしたが、準々決勝でレバノンに7-11で敗れた。 今大会ラストゲームとなる5位決定戦は、7月21日20時キックオフ(現地時間12時)。最後まで全力で駆ける。