年棒700万円から手取り11万7千円の記者に大転身…「元プロ野球選手記者」が初めて書いた"スクープ記事"
■20行だった記事が1面を飾るスクープに その言葉通り、青木は首位に立った。 「だから、僕は『青木、ニュークラブ使用でトップ』みたいな20行くらいの記事を書いたんです。そしたらデスクに『お前、これ本当か? スクープだぞ』と言われて、リライトされて1面トップになったんです。 試し打ちもしていないクラブを使うなんて普通はないですよ。クラブはそれぞれ感触が違いますから、プロといえども微妙な誤差が生まれるはずです。これも『お前の取材能力はすごい』ということで部長賞をもらいましたね」 こうしてスポーツ記者として着実に力をつけた広野は、いよいよ中日スポーツの花形であるドラゴンズ担当記者となった。 当時の中日スポーツのドラ番は、チームへの取材という通常の業務だけが仕事ではない。ドラゴンズのフロント、監督、選手の間を飛び回るメッセンジャーのような役割も果たさなければならなかった。こうした表に裏にチームを支えるドラ番を広野は1年間務めることになるのだ。 ---------- 沼澤 典史(ぬまざわ・のりふみ) ノンフィクションライター 1994年、山形県生まれ。編集プロダクション「清談社」所属。元高校球児で大学卒業後、テレビ制作会社を経てライターの道へ。過去に篠塚和典、高橋慶彦、武田一浩、谷繁元信などのプロ野球OBへの取材記事多数。プロ・アマ問わず野球関係の記事を『NumberWEB』に寄稿。著書に『野球に翻弄された男 広野功・伝』(扶桑社)がある。 ----------
ノンフィクションライター 沼澤 典史