株価プレミアム付きのTOBも!?親子上場解消銘柄で値上がり期待の5銘柄…なぜ親子上場が減少しているのか
親子上場は国内株式市場独特のものだ。以前より海外から批判の多い制度であり、東京証券取引所の市場改革とともに、親子上場も減少が進んでいる。しかし依然として親子上場を続ける企業グループもある。東証や海外からの厳しい視線もある中で、今後親子上場の解消の可能性がある銘柄を取り上げる。みんかぶプレミアム特集「2025年最強銘柄84」第5回「親子上場」ーー。
日本独特の親子上場…着実に減少している理由
国内株式市場には、上場親会社を持つ上場子会社が存在します。いわゆる親子上場です。子会社上場は、上場親会社から見ると、子会社の上場時の売出により資金調達が可能であり、更にそのまま支配権の維持もできる、非常に便利な側面があります。 しかし投資家から上場子会社を見ると、株式の多数を握る親会社が存在するため、本当に外部株主を尊重した経営がなされるか疑問が残ります。またグループ経営という観点では、子会社上場で資本が社外に流出するため、一時的な資金調達のためにグループ全体の企業価値を犠牲にする面が否定できません。 これらの理由から、親子上場は以前から海外投資家中心に非常に評判の悪い制度でした。 2000年代半ば頃から、東京証券取引所も親子上場に対して一定の規制を始めました。更に2020年台に入り、東証が市場改革に本腰を入れると共に、親子上場へも厳しい視線が注がれるようになります。その結果、親子上場の数は減少に向かっています。 かつて複数の上場子会社を有していた日立製作所は、100%子会社化やファンドなどへの売却で現在は上場子会社がありません。完全子会社化のための、株価にプレミアムを付けたTOBも珍しくはなくなりました。
今後、親子上場解消の可能性がある5つの銘柄
親子上場に対する視線が厳しくなる中で、今後親子上場解消の可能性のある銘柄を以下に取り上げました。 GMOペイメントゲートウェイ(3769) ・各種インターネットサービスを提供するGMOインターネットグループ(9449)は、傘下に様々な上場子会社を持ちます。その中でもネット決済を手掛けるGMOペイメントゲートウェイは時価総額5000億円を超え、親会社の時価総額2800億円超を大きく上回る親子逆転が生じています。両社の関係は親子上場の中でも長年に渡るテーマでもあります。両社の関係がどのようになるのか、という点は親子上場を語る上で今後も注目されるテーマと言えるでしょう。 FDK(6955) ・FDKは富士通(6702)の子会社で電池事業を手掛ける企業です。富士通はシステム事業などに特化する方針で、ノンコア事業については売却を表明しており、順次対象子会社の売却が発表されています。電池事業は富士通としてはノンコア事業となるため、FDKも売却対象となる可能性があります。 日産車体(7222) ・日産自動車(7201)グループは、東京証券取引所から上場子会社が多いグループとして指摘を受けています。日産自動車は2025年3月期中間決算で大幅な減益を発表し、9000人の人員削減を行う方針を明らかにするなど、経営の見直しが迫られつつあります。日産車体は日産自動車の上場子会社ながら、投資ファンドが大株主となっており、日産自動車の経営状態の悪化とともに、資本的な切り離しが浮上しても不思議ではありません。 デンソー(6902) ・トヨタ自動車(7203)系の自動車部品企業として世界第2位の規模を誇るデンソーは、トヨタ自動車が資本の半数以上を持つ訳ではありません(トヨタ自動車の保有比率約20%)。しかし実質的には子会社の位置付けです。東証の市場改革を受けトヨタグループ各社は株式の持ち合い解消を進めており、デンソーはトヨタグループの中でも積極的に持ち合い解消を進めています。グループからの緩やかな離脱、という方向でデンソーは親子上場の解消が進む可能も。 イオンモール(8905) ・イオンモールはイオンのショッピングセンターや商業施設を開発・運営する企業であり、総合スーパーを展開するイオンとは別会社で子会社上場しています。イオングループも日産自動車と同様に東京証券取引所から上場子会社が多いグループとして指摘を受けています。イオングループの上場子会社整理に向けた動きは具体化していませんが、いずれ上場子会社の見直しが行われる可能性があります。
石井僚一