【箱根連載】大東大・棟方一楽 前回「11番目」から発奮 ハーフU20日本新! 名前の通り「一番楽しんで走れる」
第101回箱根駅伝(来年1月2、3日)で3年連続53回目の出場となる大東大は、16年ぶりのトップ5入りを目標に掲げている。飛躍の鍵を握るのが、初の箱根出走を待つ棟方一楽(かずら、2年)だ。11月の上尾シティハーフマラソンで、U20日本新記録の1時間1分38秒で優勝。真名子圭監督(46)も往路の主要区間での起用を明言する成長株だ。「一楽」の名の通り「一番楽しんで走れる」と自負する19歳が、4度の優勝を誇る伝統校を上位へと押し上げる。 一番楽しみな舞台が迫ってきた。棟方は初出走の箱根路へ「一楽の名前は『一番楽しく生きて』と込められている。名前の通り、本番で楽しんで走れるのが僕の強みです。区間上位で走ってチームに貢献したいです」と声を弾ませる。真名子監督は「往路の主要区間を任せる」と明言。自身は名の通り、1区を熱望する。「六郷橋を終えてからが勝負どころ」と闘志を燃やす。 小学4年の11月1日に陸上を始めた。もともと、サッカーでFWとGKをしていたが、「陸上部に好きな女の子がいて、僕も陸上をやろうかな…」と10月31日のフットサルの試合を最後に、陸上に転向。特技の「暗算準二段」も「好きな子がそろばんをやっていたので、一緒にやりたいな」と始め、没頭した末に身につけた。 青森県鶴田町出身で、11月中旬から2月中旬頃まで雪が降る。「冬場の練習は大変。雪で足が滑るし、吹雪で走るのは危ない日もあった。走れない日は自分で考えて(室内で)体幹トレーニングをしたりと地味なものでした。(周囲は)途中で心が折れちゃう人もいました」。青森・弘前実まで厳しい環境で育ったからこそ「絶対に箱根に出たい思いがあった。粘り強いところも強み」とうなずいた。 入学当初から潜在能力はチーム屈指だったが、前回大会は「11番目」の選手で出走はかなわず。真名子監督には往路2日前の大みそかに呼ばれ、「この悔しい思いを絶対に忘れるな」と言葉をかけられた。奮起を促すためのメッセージ。この1年、悔しさを胸に刻み、花が開いたのは11月の上尾ハーフだった。U20日本記録を更新しての優勝。指揮官も箱根の区間配置で当初は1区を検討していたが2、3、4区の主要区間も視野に入り「迷いますね」とうれしい悲鳴を上げた。チーム目標の総合5位入り。09年の4位以来となる好成績を目指し「箱根に憧れてきた。自分の走りで貢献したい」と棟方。夢舞台への準備はできている。(宮下 京香) ◆大東大 1966年創部。箱根駅伝は68年に初出場。総合優勝は75、76、90、91年の4回。出雲駅伝は90年に優勝1回、全日本大学駅伝は73年の初優勝以来7度制し、90年度には史上初の学生駅伝3冠を達成した。長距離部員46人、学生スタッフ5人。タスキの色はライトグリーン。主なOBは88年ソウル五輪長距離代表の米重修一氏、2016年リオ五輪男子マラソン代表の佐々木悟氏(亜大監督)。 ◆棟方 一楽(むなかた・かずら)2005年1月10日、青森県鶴田町生まれ。19歳。鶴田中から弘前実に進み、3年時に5000メートルで東北高校総体出場。23年に大東大スポーツ・健康科学部に入学し、今年11月に全日本大学駅伝で5区6位。自己記録は5000メートルが14分11秒09、1万メートルが28分32秒36。祖父母は地元で「棟方冷菓店」を営み、お気に入りはスヌーピーアイス。168センチ、48キロ。
報知新聞社