水素かBEVかハイブリッドか? 乗用車同様にトラックも「次世代パワートレイン」の議論が活発!
次世代のトラックの姿とは?
つい4、5年前までは、トラックのパワーユニットがエンジンからモーターへと置き換えられるなんて、想像していなかった人がほとんどじゃないだろうか。しかし、急速に電動化が進む現在、小型トラックではEVの占める割合がジワジワと高まっている。使い勝手の悪さから普及が進まなかった状況から、燃料価格の上昇とドライバー不足解消のためAT限定免許で運転できる小型EVトラックの需要が高まっているのだ。 【画像】HKSがバッテリー交換式EVトラックを手掛けていた!? こうなってくると、トラックの電動化は加速する。従来ディーゼルエンジンだけで走っていたトラックが、モーターを搭載してハイブリッド化する、モーターだけで走るBEV(バッテリーEV)、水素を充填して電気を作りながら走る燃料電池車(FCV)などさまざまな手段で、これから電動化が進んでいくだろう。 BEVとはその名のとおり、バッテリーの電力でモーターを駆動するシンプルなEVだ。モーターの出力で走行性能がほぼ決まり、バッテリーの搭載量で巡航距離が決まってしまうため、行動範囲が狭くて個別に荷物を届ける宅配便のような小型トラックには比較的向いている構造だ。 日野のバッテリーEVトラックであるデュトロZEVは、トラックながらFFとして荷室を超低床にし、荷物積載量を増やしているのも特徴だ。 BEVは搭載するバッテリーの電力によって走れる距離が決まってくる。急速充電して使い続けようと思っても、トラックは乗用車と比べてバッテリーが大きくなりがちであり、30分の充電で走れる距離は限られてくる。バッテリー交換式のEVもあるけれど、こちらも限られた範囲を繰り返し走りまわるような使い方ならいいが、遠くまで荷物を運ぶような使い方には向いていない。
FCVのトラックが注目されている
そこで次なる新世代トラックとして注目されているのが、エンジンとモーターで協力し合って走るハイブリッド車だ。ハイブリッドは発進時や加速時などにモーターの力を利用することでエンジンの負荷を軽減し、減速時にはブレーキで熱として捨てていた運動エネルギーを電力として回収。エンジン車に比べて大幅に損失を抑えられる。 トラックの場合、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドが主流だが、モーターが発進時にアシストできるので、プリウスと同じようなガソリンエンジンとモーターを組み合わせるシリーズ・ハイブリッドという方法もある。 日野の大型トラック、プロフィアのハイブリッドは、荷室後端底部にリチウムイオンバッテリーを搭載し、モーターで加速時にアシストしながら走行する。 そこで注目されているのが水素を搭載して、空気中の酸素と反応させることで電気を作りながらモーターで走行するFCV(燃料電池車)。乗用車ではトヨタMIRAIがすでに第2世代へと進化しているけれど、トラックでの実用化はこれからだ。 FCVはトラックとの相性がいいパワーユニットと言える。走行ルートが決まっている定期便であれば、その途中経路に水素ステーションを設置すれば水素充填して長距離を走り続けられるからだ。水素に関しては、燃料電池としての利用のほかに水素エンジンとして燃焼させる方法や、合成燃料を作り出す原料としても利用できる。 水素は地球上に無尽蔵にあると言われているけれど、実際に利用するとなれば水素が発生する熱エネルギー以上のエネルギーを費やさなければ取り出すことはできず、純粋なエネルギーとすることはできない。けれども、電力もバッテリーに溜めておくには限度がある。また、劣化したバッテリーはリサイクルにも電力を使うため、どちらも課題は残されている。 そうしたなかでトヨタと日野はFCトラックを共同開発している。トヨタは米国でも大型トラックをFCVとして実証実験を行うなど、着実に実用化へ向けた動きが活発だ。
トラック魂編集部