韓国野党、大統領代行の弾劾訴追手続き開始へ…国防相・法相・検事ら20人以上の弾劾案提出
【ソウル=依田和彩】韓国の左派系最大野党「共に民主党」の朴賛大(パクチャンデ)院内代表は24日、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の職務を代行する韓悳洙(ハンドクス)首相の弾劾(だんがい)訴追手続きを開始すると発表した。
韓氏が24日午前の閣議で、尹氏の内乱罪と金建希(キムゴンヒ)夫人を巡る疑惑をそれぞれ捜査する特別検察官任命法案の公布を見送ったためだ。韓氏が、空席となっている憲法裁判所の裁判官3人を任命することに難色を示していることにもいら立ちを強めている。
大統領代行が弾劾訴追されれば憲政史上初めて。野党は尹大統領を始め、国防相、法相、行政安全相、多数の検事ら計20人以上の弾劾訴追案を提出してきており、強引な手法は批判を浴びそうだ。
野党が韓氏への圧力を強めるのは、特別検察官を早期に任命しなければ三つの捜査機関の迷走を止められないとの危機感がある。大統領は在職中、内乱・外患罪でしか訴追されない。内乱罪の捜査権限は警察にしかなく、職権乱用容疑で捜査する検察の証拠は裁判で証拠能力を問われかねない。
政府高官らを捜査する「高位公職者犯罪捜査庁」(公捜庁)は大統領を捜査する権限はあるが内乱罪では起訴できない。検察が一度起訴してしまえば、特別検察官が同じ事件で起訴できないため、野党は特別検察官制度導入を急いでいる。
野党は、憲法裁に左派の裁判官を補充できない事態も恐れる。現状の6人のまま尹大統領の弾劾審判を進めれば、罷免(ひめん)に1人反対しただけで弾劾訴追は棄却され、尹氏は復権する。6人のうち4人は保守・中道とされ、野党に不利な状況だ。
野党は、韓氏が裁判官3人を任命しない場合、27日にも弾劾訴追案を国会に上程する構えだ。