ギャンブル依存症 「自死」防ぎたい 遺族会7月発足 悩み共有、国への対策要望も
ギャンブル依存症で苦しみ自ら命を絶った人の家族が、自死遺族会を発足させた。医療機関による実態調査では、ギャンブル依存症の人は自死を考える傾向が強いとみられる。会のメンバーは「放置すれば死に至る病気。自己責任と捉えられがちだが、周囲の理解や支援で自死を減らせる」と訴える。 【表】ギャンブル依存症に関わる主な医療機関や団体(広島県内) 会は7月に遺族6人で発足。当事者を支援する公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)に設置した。メンバーが定期的に集まり、悩みを共有。依存症による自死を防ぐための啓発活動や、国への対策強化の要望などにも取り組む。 遺族会の代表神原充代さん(54)=大阪府=は2022年4月、依存症だった長男を29歳で亡くした。「ギャンブルに使うお金を渡していれば」「友人や仲間につなげていれば」…。自責の念に駆られた。 思いを打ち明ける場所がほしくてギャンブル依存症に限らない自死遺族会に参加したが、亡くなった理由ばかり問われ、苦しくなったという。「新しい遺族会では、過去を振り返るのではなく前向きな話ができたら。同じような思いをする人を増やしたくない」と願う。 国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県)は20年度、ギャンブル依存症と自死の関係を調査。全国の公的相談機関を訪れた依存症の疑いのある人64人のうち、自殺したいと考えたことがある人は70・7%に上った。自殺を企てたことのある人は14・8%いた。一般住民はそれぞれ22・7%、2・8%で大幅に上回る結果となっている。 広島県の依存症専門医療機関の一つ、呉みどりケ丘病院(呉市)によると、ギャンブル依存症の患者の半数以上が20~40代で現役世代が多いのが特徴という。同病院の公認心理師、三上博文さん(39)は「誰にも相談できず孤立や孤独感などからネガティブな思考に陥り、死を考えてしまう」と説明する。 ただ、アルコール依存症などと違って体の不調が表面化しにくく、周りからは依存症と分かりにくい。借金が膨らんで生活に支障を来してから受診するケースも少なくないという。「隠れてギャンブルにのめり込むので、家族や職場の同僚も依存症と気付きにくい」と三上さん。「早期の治療や自助グループにつなげることが重要になるため、わずかな変化でもキャッチすれば声をかけてほしい」と呼びかける。
中国新聞社