「人生で一番ボコボコにされた」「だれか止めて…」井上尚弥とのスパーを糧に…世界王者・武居由樹がいま明かす“モロニー戦、激闘の舞台裏”
大ピンチの最終ラウンドの真相「欲が出てしまって…」
――そして12ラウンドです。ガス欠であわや逆転負けというピンチを迎えましたが、最終回が始まる段階で予兆のようなものはありましたか。 いや、疲れたなとは思っていたんですけど、東洋太平洋王座の防衛戦(22年12月、ブルーノ・タリモに11回TKO勝ち)のほうがメンタル的にも体力的にもきつくて、それに比べたらそうでもなかったんですよ。12ラウンドが始まる前のインターバルで八重樫さんに「倒しにいくぞ」と言われて、自分も「これ、倒したらドーム盛り上がるな。ここで倒したらすげーじゃん」と思った。それで最初にバーンといったんです。そうしたら思っていたより残りのスタミナがなくて(苦笑)。 ――そうですね。最初は攻撃的でしたけど、いきなり失速してしまいました。 最初の1分くらいは前に出て手を出してたんですけど、どんどん失速していくんですよ。体が動かなくなった。モロニーもがんばってきました。ほんと、欲が出てしまって、ドラマティックに勝とうとしてしまって。勉強になりました。
「だれか止めてくれ…」圧倒された井上尚弥とのスパー
――試合の3週間前、井上尚弥選手とスパーリングした経験が役に立ったという話がありました。 10ラウンドのマス・スパーです。スケジュールをアプリで管理してるんですけど、実施する1週間くらい前に『尚弥 武居 マス・スパー』と予定が入って「うわ、なんだよこれ」と(笑)。尚弥さんとはマスはしたことがあるんですけど、マス・スパーは初めてでした。 ――マス・スパーというと軽めに当てる感じでしょうか。 そうなんですけど、まず尚弥さんには軽めにも当てられない。触らせてくれないので。こっちはどんどんリズムが狂ってスタミナも奪われて、尚弥さんが当てたいパンチをどんどん当てて。それで6ラウンド目くらいから、試合のときの12ラウンド目みたいな感じになりました。「これ、だれか止めてくれないのかな……」と思いながら(笑)。格闘技人生で最大ですね、あれだけボコボコにされたのは。ほんと、いい経験になりました。 ――井上選手はどこが優れていると感じますか。 やりたいことをやらせてくれない。飛び込みのフックを打とうと思っても、もうそこにいない、触らせてくれない、合わせられる。じゃあ左ボディを打とうと思ってもダメ。どんどん打つ手がなくなって、何もできない。手を出すこともできない。あの10ラウンドはひどかったですね。
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