ロードサイドの大型書店閉店に常連客落胆の理由「駐車場があって在庫豊富な本屋がなくなるのはツライ」
■ロードサイドの書店も閉店が続く 首都圏の駅前から老舗の本屋がなくなる――。こうしたニュースは昨今、盛んに報じられるようになった。その一方で、あまり注目されることがないのが、郊外のいわゆるロードサイド型の書店の閉店である。郊外の広い敷地を活かし、在庫数も多い大型書店が多かったが、そうした書店もひっそりと閉店する例が相次いでいるのだという。 【写真】大人気漫画「しゅごキャラ!」が Vポイントカードに チェック柄のカードデザインやオリジナルグッズなどかわいいアイテムをみる 首都圏ですらその傾向が顕著だ。環八通り沿いに立つ「蔦屋書店 練馬春日町店」は、2024年9月23日に閉店を決めている。いわゆる駅前の書店の閉店と比べると話題になりにくいかもしれないが、地域に根差した大型書店として支持を集めていた名店であった。この蔦屋書店に通っていたという、地元に生まれ育った50代の男性に話を聞いた。 「練馬近辺は、駅前にまだ本屋がいくつかありますが、この蔦屋書店は駐車場が大きいので、車で行く時には便利でした。閉店はとても残念ですね。本はたくさん買うと結構重いじゃないですか。持って帰るのも一苦労だったから、駐車場も完備されたこの書店の利便性は高かったんですけどね……」 ちなみに、この方によると、書店を訪れた際には隣にあった「いきなりステーキ」でランチを食べるのが定番の流れだったという。ところが、同店はいち早く7月で閉店してしまったとのこと。近所に「丸亀製麺」や「ビッグボーイ」もあるが、子連れでいつも混んでいるため、「サクッと食べて帰るのによかったんですがね」と話す。 「あ、そうそう、隣にある春日町バッティングセンターは今人気の野球漫画『忘却バッテリー』に出てくるバッティングセンターのモデルとして使われているんですよ。聖地にもなっている場所なので、蔦屋書店がうまくコラボすれば、盛り上がったと思うんですけれど。まさか、閉店する日が来るとは。これからどこの書店に通おうか、悩みの種です」 ■郊外の書店ならではのメリットは多い 話にあったように、郊外の書店は大型の駐車場を完備していることが多いため、大量に本を買い込む人にとっては何かと便利であった。また、家族連れで来店し、本を買い込み、その後は近くの飲食店でランチを楽しむ――こんな日常はよく見られたものだが、書店は薄利多売のビジネスモデルゆえ、紙の本離れが進みつつある時代では、経営も苦しくなっていると推測される。 地方在住者にとって、郊外の書店はありがたい存在であった。何しろ、駅前の書店の倍以上の在庫数を抱えることが普通だ。しかも、チェーンの書店であれば取次との関係の深さゆえか、新刊書や話題書がしっかりと発売日に入荷するのである。新刊書が数日遅れで入るのが普通だった地方在住者にとって、この衝撃は大きかったといえる。 郊外の書店を苦しめているのは、紙の本から電子書籍に移行が進んだだけでなく、若者の車離れも影響していると考えられる。かつては地方では1人1台車が必要などと言われたものだが、昨今は車を持たない地方在住者も増えているという。こうした時代では、ロードサイドの書店に車で行って本を買うことすら贅沢になりつつあるのかもしれない。
文=山内貴範