復活した“生きた化石”の印象は? トヨタ「ランドクルーザー70」はなぜ40年も生産され続ける? 「見た目で選ぶ」と痛い目に遭うって本当!?
1980年代にタイムスリップした気分に浸れる操作系
今回の大改良でモダナイズされた新型「ランドクルーザー70」ですが、とはいえ実際に触れてみると、やはりイマドキのクルマとは明確に異なる感覚があります。
それを実感する一例が、ドアロックを解除してクルマに乗り込むとき。いまや軽自動車でも常識のスマートキーさえ備わっておらず、ロックを解除するためのリモコンもキーとは別体式となっています。操作時の感覚はまさに1990年代です。 また、ドアを開ける際の「ガチャ」というラッチ音や、クラシカルなレバー式の空調操作パネルも、かつての「ランクル70」のまま。 一方、新型になって刷新されたメーターパネルもデザイン自体は非常にレトロで、クラシックな雰囲気によく馴染んでいます。走らせる前から、1980年代にタイムスリップした気分に浸れますね。 ダッシュボード自体のデザインは、2014年に再販されたモデルと同じ。とはいえ細かい部分を見てみると、スマホ充電用のUSBポートが備わっていたり、センターコンソールのトレイが充電ケーブルを接続した状態のスマホを置けるよう工夫されていたり、ATがセレクターレバーを前後させてシフトアップ/ダウンできるようシーケンシャル化していたりと、時代に合わせた改良がしっかりと加えられています。 ●イマドキの水準に引き上げられた新しいパワートレイン 2014年に再販された際のモデルは、4リッターのV6ガソリンエンジンとMTの組み合わせだったパワートレインは、新型で最新鋭の2.8リッターディーゼルターボ+ATへと進化を遂げました。最高出力204ps、最大トルク500Nmと、スペックもイマドキの水準に引き上げられています。 その乗り味は、乗用車用ディーゼルエンジンと同レベルとまではいきませんが、かつてのディーゼルエンジンに比べると音がマイルドになり、快適性も高まっています。 そんな新型「ランクル70」は、乗り心地だって“予想以上”に快適です。とはいえ、乗用車に匹敵する快適性を手に入れた最新のSUVと同じ感覚で乗れるか? といわれれば、それは難しいかもしれません。 新型「ランクル70」の乗り味には、依然としてタフなクロスカントリー4WDテイストが残っており、舗装路での操縦安定性は進化しているものの、一般的な都会派SUVとはレベルが異なります。 具体的にいえば、高速道路を走っているときはステアリングの修正量が多く、ワインディングでのコーナリング時などは「よいしょ!」という感じで曲がっていきます。 新型「ランクル70」の乗り味がそのような味つけになっている理由は明確です。「ランクル70」のメインステージは険しいオフロードであるからにほかなりません。オフロードでの走行性能が第一で、舗装路よりもそちらを重視しているのです。もしもダート路面を走る機会があれば、そんな新型「ランクル70」の性格の一端を理解できることでしょう。 * * * 貴方がもし新型「ランクル70」を買おうというのであれば、そうした素性をしっかりと理解しておいた方が無難でしょう。 なかには「見た目だけで欲しくなった」という人がいるかもしれません、それはそれで否定はしませんが、このクルマのキャラクターを理解し、試乗をおこない、乗り味をしっかりと確認してから購入を決断されることをおすすめします。 ただし、極悪路を走るために新型「ランクル70」を選ぶというのであれば、事前に試乗する必要などありません。もしも過酷な場所でモノを運ぼうとした場合、「最終的には、ロバか『ランクル70』になる」のですから。
工藤貴宏