ギザ10、なぜ最近見かけない? “珍しいコイン”の特殊事情と進むプレミア化
■ギザ10の流通量が減っている? 誰もが知っている“珍しいコイン”の筆頭格といえば、“ギザ10”だろう。現在流通している10円玉は縁にギザギザがない。しかし、昭和26年~昭和33年に発行された初期の10円玉にはギザギザがある(なお、昭和31年のみ発行されていない)。これがギザ10である。なかでも昭和33年の10円玉は発行枚数が2500万枚と、10円玉の中では特に少ない部類のため珍重されている。 【写真】ギザ10が10万円? 和同開珎はいくら? 奥深きコインの世界をみる さて、少し前まではちょっと財布の中を探したり、銀行で両替をすれば比較的見つかりやすかったギザ10なのだが、最近は流通量が明らかに減っている。そのせいか、貴重な存在になりつつあることをご存じだろうか。いったいなぜ、流通量が減っているのか。それは回収が進んでいるためである。 ■最古のギザ10はなんと73年前に発行 流通している最古のギザ10は昭和26年の年号が刻まれたものだ。西暦に直すと1951年で、発行以来73年も経っている。73年前のコインが未だに使われていることに驚きであるが、さすがにそれだけの年月、様々な人のもとを渡り歩いていると摩耗が激しくなる。平等院鳳凰堂も刻印や、特徴であるギザがすり減ってしまったギザ10に出合うことも珍しくない。 こうしたボロボロなギザ10が銀行に預けられてしまうと、回収されてしまうことが多いそうだ。また、最近はキャッシュレス化が進んでいるため、10円玉を使う機会そのものが減少しつつある。1円玉などは、令和の時代に入ってから流通用のものは1枚も発行されていないのだ。普段、小銭なんかほとんど使わないという人も、案外珍しくないのではないだろうか。 ■流通しているギザ10のプレミア化も? 10円玉は汚れやすく、きれいな状態で保つことが非常に難しいコインである。そのため、新品同様の状態が良いギザ10は、銀座コインなどのオークションで数万円の値段が付くことはザラで、場合によっては20万円以上で取引された例もある。しかし、ギザ10は状態によって極端に評価が分かれるコインである。お釣りの中から見つかるギザ10の流通品は傷や摩耗が激しいため、コレクション的な価値は低く、コイン商に持ち込んでも買い取り不可となることが多かった。 ところが、これまで述べてきたように、回収が進んでいるため、いざ探そうと思うと見つかりにくい存在になりつつある。これまでプレミアがつかなかった流通品のギザ10も、ゆくゆくはプレミア価格で取引される可能性がある……かもしれない。とにかく、ギザ10ほど人々に愛されているコインも珍しいと思うし、興味をもった人は探してみてはいかがだろう。そして、半世紀以上、たくさんの人の手に渡ってきた歴史の重みを感じてほしい。
文=元城健