清原和博「ドラフトのことを謝罪してください」遅刻してきた巨人側は笑った「キミが来るなら、落合博満を切るんだよ」…FA移籍「落合vs清原」騒動
「ドラフトのことを謝ってもらえませんか?」
ライオンズブルーに別れを告げ、11月12日に他球団との交渉が解禁となると、13日にはさっそく都内のホテルで巨人との初交渉に臨む清原。すべてはトントン拍子に進み、この日には入団合意するのではという見方もあったが、事態はここから意外な展開を見せる。 「当時の球団代表は約束の部屋で会うなり、チーム内の年俸での序列などを話して『この条件しか出せない』と言ってきました。なぜ僕が欲しいかとかそういうことではなく、来るなら来れば、という感じを受けたんです。だから、まず『僕の中では11年前のことが整理できていないんです。ドラフトのことを謝ってもらえませんか』と言いました。そうしたら、その人は僕の言葉を聞いて笑ったんです。そんなこともあったねえって、ドライな感じの笑いでした。結局、謝罪のないまま『君が来るなら落合を切るんだ』とか他の選手のことを話し始めた」(告白/清原和博/文藝春秋) 交渉時間に遅刻してきた巨人の深谷尚徳球団代表、鯉渕昇同代表補佐は「ウチに入りたいなら、入れてやるよ」という態度で、旧年俸2億4000万円から上限いっぱいの3億4500万円ではなく、年俸3億円の2年契約を提示。さらに一塁を空けて待つという意味で良かれと思って口にした「落合のリストラ」も、清原に「いつか自分もその切られる側になるのではないか」と不信感を抱かせてしまう。実は巨人が清原と交渉する前日の12日夜、深谷代表は「(長嶋)監督が必要だと思っても、経営の問題があるし簡単にはいかない。全体をみていかないと。リストラとはそういうものでしょう」と落合切りを遠回しに予告していた。すかさず13日朝、スポーツニッポンが「落合退団」をトップで報じ、翌14日は日刊スポーツも「落合解雇」の一面で続き、各メディアがオレ流の肉声を取ろうと本人のもとに殺到する。
落合の怒り「失礼な話だよ」
落合はもともと1996年1月末の人事で送り込まれた深谷球団代表、鯉渕同代表補佐、その前年にアマ球界から招へいした石山建一編成部長ら現体制の動きに不信感を抱いていた。渡邉社長や長嶋監督の意向とは関係なく、フロント陣は本気で自分を追い出そうとしている。清原の交渉過程で、その情報が公になると、オレ流は頭を下げて残留を請うでもなく、そのまま黙って引き下がるような男でもなかった。伊豆の吉奈温泉で巨人のベテラン・中堅組とオーバーホールを行っていた落合は、14日夕方、自宅に戻ると集まった報道陣に向かって怒りをぶちまけるのだ。 「あいつ(清原)は12月31日までに返事をすればいいんだろ。どっちにしても清原待ちか……。そこまで待たせるのは失礼な話だよ。オレがいらないなら10月の時点でクビを切ればいいんだ」(週刊ベースボール1996年12月2日号) 追い込まれた落合博満が、巨人軍に対して反撃に出たのである。 <続く>
(「ぶら野球」中溝康隆 = 文)
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