【坂口正大元調教師のG1解説】千両役者ルメール復活、存分に末脚引き出す好騎乗/オークス
<坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼> <オークス>◇19日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳牝◇出走18頭 今や、ルメール騎手は日本の競馬に欠かせないジョッキーの1人です。表現が適切かどうか分かりませんが、彼は本当に楽しそうに乗りますね。いつも余裕があって、笑顔を絶やさず、結果も出す。ふと大谷翔平選手を見ているような気持ちになりました。チェルヴィニアのウイニングランでのガッツポーズ。千両役者が帰ってきました。 道中は、自身も乗ったことがある桜花賞馬ステレンボッシュを見る位置でした。向正面ではすぐ左前に相手を見ながら、しっかり折り合いました。そのまま内へ進路をとったステレンボッシュとは対照的に、4コーナーでは外へ。昨秋のアルテミスSまでの3戦に騎乗し、確信を得ていたであろう非凡な末脚を、存分に引き出しました。 3月末のドバイで大けがを負いながら、NHKマイルCが行われた5月5日にはもう復帰しました。乗るからには万全、100%だと本人は言うと思いますが、実際はまだ痛いところもあるでしょう。ですが、そんなそぶりは一切見せず、普通に乗って、勝つ。まさにプロです。桜花賞13着の馬が2番人気ですから、ファンもルメールを待っていたということでしょう。 2着に敗れたステレンボッシュですが、戸崎騎手は完璧に乗っています。距離ロスを抑え、4コーナーから直線も不利なくスムーズに導き、いったんは完全に抜け出しました。落鉄もあったようですし、普通なら押し切れるところを、外を回ったチェルヴィニアに差し切られたのですから、今回は相手の能力が上だったということでしょう。 3着ライトバックはいつもいい脚できます。ゴールが決まっているだけにもどかしいですが、いい馬ですね。驚いたのは5着のランスオブクイーン。未勝利戦を勝ったばかりで、4着クイーンズウォークと鼻差の好走でした。スタミナは相当ですし、先々まで覚えておきたい1頭です。 (JRA元調教師)