赤ちゃんの頭の形、気になっていませんか 広島大病院の専門外来開設2年 ヘルメットで矯正、病気なら手術も
赤ちゃんの頭の形のゆがみ、気になっていませんか。向き癖なのか、病気なのか…。広島大病院(広島市南区)の「赤ちゃんの頭のかたち外来」では、変形に病気が隠れていなければ、ヘルメットを使った矯正治療に取り組んでいる。中四国を中心に九州からも患者が訪れ、外来開設から2年で544人が受診。後頭部が平らな「絶壁頭」などの改善が期待される。 【画像】赤ちゃんの頭の変形例と治療用ヘルメット「クルム」の最新モデルを装着した赤ちゃん 広島市東区に住む40代の公務員女性は昨年7月に長女を出産した。「しばらくすると娘の後頭部が『絶壁』なのが気になり始めて」と打ち明ける。かかりつけ医に相談して「大丈夫」と言われたが、不安は募るばかり。 「横幅が広くハチが張っている気もして。うまくポニーテールや三つ編みができるかなって」。今年1月、インターネットで調べて外来を受診した。検査の結果「重度の短頭症と斜頭症」と診断された。 ヘルメット治療に保険は適用されず、オーダーメードのヘルメット費用と診療などで約50万円かかったが「一生のこと」と迷いはなかったという。6カ月間の治療を経て「気にならない程度に改善した」と娘の後頭部をなでる。 赤ちゃんの頭の変形は、左右が非対称の「斜頭症」、後頭部が丸みを帯びず平らな「短頭症」、頭が前後に長い「長頭症」がある。治療では頭を3Dスキャンし、矯正したい形のヘルメットを作成。月1回の通院時に、内側のクッションを成長に合わせて薄いものに張り替える。装着している時間が長いほど効果が上がるため、入浴時以外は着けたまま生活するのが基本になる。 治療期間は約半年。改善は症状や治療の開始時期で大きく異なるが、生後3、4カ月が最も効果が大きく、6カ月以内に治療を始めるのが望ましい。外来を担当する脳神経外科の山崎文之准教授は「生後3カ月以下の赤ちゃんは改善する可能性が高い。治療するなら、中でも短頭症、長頭症は早めに始めて」と話す。 ヘルメット治療は1990年代に米国で始まった。同病院では、頭蓋骨の成長が著しい生後2~7カ月の赤ちゃんを対象として2022年8月に外来を新設。これまで受診者の半数271人がヘルメット治療を受けた。 同病院で扱うヘルメットはジャパン・メディカル・カンパニー(東京)が開発。これまで約1万5千人分を製作してきた。外側は高強度樹脂を使ったプラスチック、頭に触れる内側は低反発クッションで、計140グラム前後と軽量。通気性に優れて蒸れにくく、水洗いもできるという。 ただ、注意が必要なのは「頭蓋縫合早期癒合症」という病気が隠れていないかということ。頭蓋骨は7パーツに分かれ、赤ちゃんの時にはそれぞれに隙間がある。それが通常よりも早く閉じてしまう病気だ。脳の成長が妨げられる恐れがあり、手術が必要なケースもある。同病院ではまず頭蓋骨を超音波検査して病気の有無を確認する。 発達の遅れが向き癖の原因になっていることもある。同病院では脳神経外科と小児科だけでなく、リハビリテーション科が緊密に連携。軽度のゆがみは、寝かせる際の頭の向きなど積極的な体位変換で改善させる。山崎准教授は「まずは病気の有無を調べるのが重要。頭の形が気になったら1カ月、3カ月健診などで相談して」と話している。
中国新聞社