生活困窮者に栄養いっぱいの食を 宇都宮 生鮮食品加工し月100食用意「協力者増やしたい」
食生活がレトルトやインスタント食品に偏りがちな生活困窮者らに生鮮食品を加工したおかずを食べてもらおうと、宇都宮市内の医療機関や企業が連携し、余剰食材を使った冷凍食品を届ける取り組みを進めている。管理栄養士らが自然解凍でおいしく食べられるおかずを考案し、毎月100食ほど用意。健康不安がある困窮者やひとり親世帯に配布している。関係者は「協力者を増やし、活動を充実させたい」と意欲を込める。 困窮者支援では、主にフードバンクが常温で長期保存できる食品を提供して暮らしを支える一方、肉や魚の不足など栄養の偏りが懸念される側面もある。 そうした中、宇都宮市医師会の社会支援部が、冷凍食品のおかずを届ける取り組みを発案した。同部は健康に影響する社会的な要因に着目して支援につなぐ「社会的処方」を推進。村井邦彦(むらいくにひこ)医師(54)が院長を務める村井クリニック(宇都宮市)を中心に、2023年春から取り組みが始まり、軌道に乗ってきた。 事業名は「生鮮食品プロジェクト」。同市内の水産加工業者などが食材提供で協力する。廃棄予定の食べられる食材を、同クリニック関連団体の「認定栄養ケア・ステーションうつのみや」が受け取り、毎月1回、調理と真空包装をして冷凍する。 7月中旬の活動では同市内の事業所のキッチンで、管理栄養士ら3人がイカとブロッコリーの炒め物など魚料理5品を手際よく作り、次々とパックに詰めた。 同団体管理者の岩本啓子(いわもとけいこ)さん(61)は「薄味を意識し、野菜も入れて一食分のおかずになるよう工夫している。おなかも心もいっぱいにしてほしい」と笑顔を見せる。配布を担う認定NPO法人「フードバンクうつのみや」によると、手軽に食べられる点が母親らに好評という。 活動の継続に向け、今後は人材や食材の確保が課題だ。働く意欲のある困窮者らが配布側に回るなどの緩やかな就労支援や、活動場所に子ども食堂を加え、調理体験を通じた食育の展開なども構想している。 村井医師は「食材の提供や保管、移送などさまざまな場面で協力者を広げ、仕掛けの種を増やしたい」と話している。