舞台『エウリディケ』 和田雅成&崎山つばさインタビュー 演出家・白井晃のもと「等身大の自分たち」で作り上げる愛の物語
2007年にニューヨークで上演され、ニューヨークタイムズ誌では「神秘的で素晴らしい前衛的な作品」とも評された、アメリカの人気劇作家、サラ・ルールによる戯曲『エウリディケ』が日本初演を迎える。ギリシャ神話として世界的にも知られるこの物語を、現代に置き換えて新たな視点で描く本作で演出を務めるのは、白井晃。切なくも美しいギリシャ神話のラブストーリーと、物語の根底に描かれる父と娘の愛の物語を情感豊かに作り上げる。 オルフェ役の和田雅成と、危険でおもしろい男/地下の国の王の2役を演じる崎山つばさに本作への想いを聞いた。 【全ての写真】舞台『エウリディケ』に出演する和田雅成&崎山つばさ
――脚本を読んだ率直な感想を教えてください。 和田 正直なところ、最初は理解できないところもありました。かなり早い時期に脚本をいただいたので、それから何回も読んで、本読みのときにはほとんどのセリフが入っている状態だったのですが、実際に本読みをしてようやく自分の中に入ってきたなと感じました。台本を自分で読んでいるときと、皆さんの声で聞くのでは全く違う感覚があったので。とにかく美しい作品だなというのが第一印象です。 崎山 小説のようだし、絵本のようだし、戯曲的なギリシャ神話でもある。様々な要素が詰まっているけれども現代に通じるものもある。自分の役がどうというよりも、気付いたらオルフェやエウリディケの目線で読んでいて、どんどん吸い込まれていくような感覚がありました。 ――おふたりが演じる役の印象は? 和田 オルフェは全てが音楽でできている人間なので、例えば、恋人と会話しているときも自分の中には音楽がずっと流れていて、メロディーを奏でている。今、相手の感情はどのようなメロディーなんだろう。今の自分の感情はどういうメロディーなんだろうとずっと考えています。もちろん、エウリディケのことは愛していますが、それと同時に音楽が大きな存在として心の中にある。とにかく“音楽”の印象が強い人物だと感じ、今はそれを意識しながら僕も生きています。 ――演出の白井さんからは、どんな言葉がありましたか? 和田 「和田くんから生まれてくるものでいい」と言っていただきました。この年代の人を生きようとするのではなく、現代を生きている自分たちのままでいい。例えば、1950年代の、おじいちゃんやおばあちゃんの服を引っ張り出して着ている今の子たちのようなイメージです。ギリシャ神話の時代を生きようとするのではなく、ただ等身大の自分たちで、その時々の心情を自分の中の引き出しから出して演じるという感じです。もし、その心情が引き出しにないならば、そのときに生めばいいと。 ――なるほど。崎山さんは、今回、危険でおもしろい男と地下の国の王の2役を演じます。 和田 危険でおもしろい男、良い役名ですよね(笑)。 崎山 初めてですね、名前じゃないのは。幼稚園の頃の「小人B役」以来かな(笑)。でも、難しい役だと思います。何をもって危険とするか、何をもっておもしろいとするかを求められているのかなと。白井さんが、「例えば、切ないシーンで切ない音楽が流れるよりも、激しい曲が流れた方がより切なく感じる」とおっしゃっていたのですが、そういうことなのかなとも今は感じています。サラ・ルールの詩的な部分を言葉で表現すると「危険でおもしろい男」になるのかなと。 本来、ギリシャ神話では、エウリディケはヘビにかまれて死んでしまうんですよ。ですが、この作品ではそうした描写はない。それは、僕がヘビになる瞬間があるのかもしれないし、逆にヘビを見つけて助けようとしたのかもしれないし、色々な解釈ができるということでもあります。今はまだ稽古をしている最中なので、やっていくうちに変わっていくところも、見えてくるものもあると思いますが。 ――地下の国の王についてはいかがですか? 崎山 地下の国の王は、まだ稽古でやっていないので、想像できていません。もちろん、自分なりにこうしようというものはあるのですが、それが白井さんのイメージと合致するのかはまだなんとも……。ト書きに「三輪車に乗ってくる」とか、「身長が3メートルある」と書いてあるんですよ。身長3メートルか……シリコン入れた方がいいかなって(笑)。 和田 つばさはいけるタイプだもんね。2メートル50センチまではやったことあるもんね(笑)? 崎山 そうそう(笑)。でも、これは演劇なので、見せ方はいくらでもあるじゃないですか。なので、たくさんチャレンジをして見つけていきたいと思います。