高速回転、自在の腕と脚 初代王者目指す半井―ブレイキン・パリの灯は近く
ひのき舞台で踊ることを心待ちにしている。 パリ五輪で初めて採用される注目のブレイキン(ブレイクダンス)。男子の半井重幸(ダンサー名SHIGEKIX)=第一生命保険=は「当日がオリンピックというより、もう始まっている気持ちで毎日を過ごしている」。目標は初代王者。22歳は余念なく、自らのダンスと向き合ってきた。 【写真】ブレイキン男子の3位決定戦で演技する大能寛飛 昨秋の杭州アジア大会で優勝し、ブレイキンの日本勢で一番乗りで五輪切符を手にした。それでも「五輪のステージに立つ頃には(アジア大会での踊りが)子どもっぽいと言えるくらいに成長したい」。ライバルたちが五輪予選を戦う中、本場米国での伝統的なカルチャーの大会などに出場し、場数を踏んできた。 半井のムーブの特長は何と言っても、その美しさにある。頭を地面に付けての高速回転や、体をぴたりと止める「フリーズ」のキレは抜群。小刻みに丁寧なステップを踏んだかと思えば、曲調が激しくなると一気に加速する。まるで軟体動物のように、腕や脚を自在に動かす。 五輪での実施が決まって以降、ブレイキンの知名度は格段に上がった。それも半井の存在あってこそ。カルチャーの要素が失われるのではないかと葛藤するダンサーもいた中、「僕の感覚としてはスポーツになったわけではない。大きな言い方にはなるが、ブレイキンの持つエネルギーがスポーツにまで影響を与えたということ」。第一人者らしく、常に前向きなメッセージを発信する。 パリ中心部のコンコルド広場にステージが設けられる。「モチベーションにあふれていて、めらめらしている。当日が一番、自分らしいと思ってもらえるように」。若くから脚光を浴びてきた。集大成とも言える舞台へ、胸を高ぶらせている。