2024年 NRF ビッグショー、テクノロジー重視の陰で消えた「Z世代」の文字
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。 今年の全米小売業協会(NRF)のビッグショーでは、AI、IT、DTCなどさまざまな文字が飛び交ったが、「Z」はその中には含まれていなかった。 1月14~16日の3日間に実施された数十のセッションの中で、特にZ世代に焦点を当てたものは「Z世代を読み解くデジタル戦略(Digital Strategies to Decode Gen Z)」の1つだけだ。Z世代が多くの時間を費やすチャンネルである「TikTok」「インスタグラム」「ソーシャルメディア」をタイトルに含むセッションはない。また、ブランド構築において重要性を増しているZ世代インフルエンサーを起用したセッションもない。セフォラ(Sephora)やアルタビューティー(Ulta Beauty)、グロシエ(Glossier)といったZ世代に人気のある企業がNRFに参加しているが、彼らのパネルディスカッションは、2024年のトレンドやデータ、美容などの特定のセグメントに関する幅広い会話がテーマとなっている。 ここ数年、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)やパクサン(Pacsun)のような小売業者は、Z世代という新たに力を持つセグメントでの成功を掲げてきた。インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)によると、1997年から2012年生まれのZ世代は、間もなく現在の消費者の中で最大の消費者層になるという。しかも、市場調査会社は、彼らの興味や価値観、企業に何を求めているかを理解するために、多額の資金を投入してきた。 しかし、今年のNRFビッグショーでは、Z世代への関心はAIに関する議論に取って代わられ、このカンファレンスがテクノロジーに重点を置いていることを反映している。
労働力として重要な地位を占めつつあるZ世代
昨年、Z世代は「ビッグ・ショー」のアジェンダの中で、暗黙的かつ明示的な面で、より大きな部分を占めていた。コーチ(Coach)やトミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、ナーズ(Nars)は、Z世代のあいだで大きな盛り上がりを見せているテクノロジーとして、NFTやメタバースといったトピックについて語った。クレアーズ(Claire’s)のセッションでは、Z世代とα(アルファ)世代に明確に焦点が当てられていた。「パーソナライゼーション」がNRFのバズワードの1つであるならば、「Z世代」もまた、間違いなくその上位にあった」とリテールブリュー(Retail Brew)は前年のイベントについて記している。「パーパスドリブンな小売からライブショッピングまで、若い消費者の関心は高かった」。 市場調査会社CI&Tのリテール戦略ディレクターであるメリッサ・ミンコウ氏は、「2023年は、メタバースに関するセッションが増え、ライブストリーミングに関するセッションが増え、Z世代が暗黙のうちに語られていた。「今年は、より技術的な、舞台裏のようなカンファレンスであり、AIはというと、運営モデルに関するものであるため、「Z世代」は排除されてしまった形だ」。 リサーチ&アドバイザリー会社ジェンジープラネット(Gen Z Planet)の創設者ハナ・ベンシャバット氏も同様に、今年のアジェンダは 、「優先順位の問題 」であると米モダンリテールに語った。「過去12カ月間に、AIについて耳にしたことはすべて、それが非常に上位の議題として取り上げられることは理にかなっている」と同氏は言う。同時に、「Z世代というトピックに触れずにセッションを行うのは、実に信じがたいことだ」とも述べた。 NRFビッグショーには、Z世代が自然になじむトピックがたくさんある、とベンシャバット氏は指摘する。特に小売業では、Z世代が労働力として支配的な地位を占めつつあり、その多くが店舗スタッフとしての役割を担っている。労働者の確保と育成に関するセッションでは、Z世代をどのように惹きつけ、昇進させるかについて話すべきだと同氏は話した。また、CMグループ(CM Group)の調査によると、Z世代はほかのどのグループよりも実店舗での買い物を求める傾向が強いという。そのため、店頭でのショッピングや店舗デザインなどに関するセッションでは、この点に触れるべきだとも話した。