子どもを怒鳴りつける行動は“体罰と同等またはそれ以上”に有害だった|研究で明らかに
最近の研究で、子どもを怒鳴りつける行為が、“性的虐待や体罰と同様に有害である可能性”があることが明らかになった。この衝撃的な事実は、子どもたちへの言葉の暴力がいかに深刻な影響を与えるかを再認識させるものであり、社会全体で考えていかなければいけない。 〈写真〉子どもを怒鳴りつける行動は“体罰と同等またはそれ以上”に有害だった ■子どもを怒鳴りつけることによる悪影響は長期に及ぶ 子どもに対する言葉の暴力、特に怒鳴りつける行為はその影響は表面的には見えにくいため、軽視されがちだ。しかし、研究によると、子どもを怒鳴りつける行為は深刻な心理的・感情的な影響を与え、それは一生涯にわたって続く可能性があるという。具体的なデータとして、米国の児童精神医学協会の調査によると、怒鳴られて育った子どもたちのうち、約40%が成人後にうつ病を発症しやすくなることが確認されている。また、怒鳴られることによって自尊心を傷つけられた子どもたちのうち、約30%が成人後に社会的な不安障害を抱えるリスクがあると報告されている。また、英国の研究では、家庭で頻繁に怒鳴り声を浴びせられた子どものうち、約25%が将来的にアルコール依存症になるリスクが高まることが示されている。また、怒鳴り声によって精神的に追い詰められた子どもたちの約20%が、成人後に自傷行為に走る傾向があると報告されている。これらの影響は、単なる「厳しさ」や「しつけ」の範疇を超え、深刻な精神的虐待として認識されるべきだ。怒鳴り声は、否定的な音量やトーン、攻撃的な発言内容によって、子どもの自尊心や自己肯定感を著しく傷つける。その結果、子どもは自分を否定的に捉えるようになり、社会的な不安や孤立感を強める可能性がある。 ■負の世代間連鎖が起こる可能性も 研究によると、子どもに対する言葉の虐待の加害者は、主に“親”であることが多いという。怒鳴り声の中で育った子どもたちは、自己肯定感の低下や、信頼関係の構築に困難を抱えることが多くなる。さらに、子どもが将来的に自分の子どもに対して同じような虐待行動を繰り返す可能性も指摘されている。つまり、怒鳴り声は単なる一時的な感情の爆発ではなく、世代を超えて影響を及ぼす深刻な問題なのだ。 ■言葉による虐待だと認識し、対策を講じるべき これまで、児童虐待は主に体罰や性的虐待に焦点を当てられてきたが、言葉による虐待も同等以上に深刻な問題として認識されるべきだ。研究者たちは、言葉による虐待を明確に定義し、法律や政策においてもその重要性を反映させる必要があると主張している。親は、言葉の選び方やトーンが非常に重要であることを理解し、適切なコミュニケーションを心がけることが求められる。例えば、ある調査では、親が怒鳴り声をあげずに対話を重視した家庭では、子どもが健全な心理的成長を遂げる可能性が50%以上高まるという。子どもとのコミュニケーションにおいては、言葉の力を前向きに活用することが重要だ。たとえば、「あなたならできる」「いつも頑張っているね」といった励ましの言葉は、子どもの自己肯定感を高め、健全な心の成長を促す。親が日常的に子供に対してポジティブなメッセージを送り続けることは、親子関係の強固、子どものメンタルヘルスの安定、ひいては子どもの未来にとって最良の投資となるのだ。 出典: 6 Reasons Why Yelling at Kids Doesn't Actually Work What Are The Short- And Long-Term Psychological Effects Of Yelling At A Child? Shouting at children can be as damaging as physical or sexual abuse, study says Yelling at kids can be as harmful as sexual or physical abuse: study 文/山口華恵
山口華恵