三菱UFJ銀行 さすがに土下座はありませんが…半沢頭取が平謝り 行員が貸金庫から時価十数億円窃盗
三菱UFJ銀行は16日、行員が支店の貸金庫から金品を盗んでいた問題で、初めての記者会見を都内で開いた。半沢淳一頭取=写真=は「信頼、信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがすもの。お客さまや関係者の皆さまに心よりおわびを申し上げます」と謝罪し、深々と頭を下げた。 硬い表情で会見場に入った半沢氏。11月22日の問題公表から会見まで3週間以上を要したことに「お客さま対応を最優先に取り組んだ」と釈明。自身の進退については「再発防止策が固まった段階で決めたい」と現時点での辞任は否定した。 同行によると、行員は40代の女性で、11月に懲戒解雇した。2020年4月から今年10月までの約4年半、いずれも都内の練馬支店(旧江古田支店を含む)と玉川支店で、顧客約60人の貸金庫から現金や貴金属を盗んだとされている。被害総額は時価十数億円。既に20件弱、計約3億円の補償を実施している。ただ、新たに数十人から盗まれた可能性があるとの申告を受けており、被害がさらに広がる可能性もある。 事件は今年10月31日に顧客からの問い合わせで発覚。当時、行員は支店の営業課長。ほぼ1人で貸金庫業務を取り仕切っていた。 貸金庫には顧客が保有する鍵と、各支店で管理する「予備の鍵」がある。予備の鍵は顧客と担当者の割り印が押された封筒に入れて保管されるが、行員は予備の鍵を管理する立場を利用して盗みを繰り返した。半年に1度、別会社が予備の鍵の保管状況を確認するシステムを導入していたが機能せず。発覚まで4年半かかった。 また、不審に思った顧客から支店に問い合わせも過去にあったが、対応したのもこの行員。「貸金庫の中にお客さまのお忘れ物がございました」などと答えて盗んだ金品を返し、事件発覚を遅らせる行動を取っていた。行員1人に金庫の管理業務が集中していたことも問題視されている。 行員は本店勤務経験もあり、半沢氏は「このようなことをする人間であったとは聞いていない」。銀行の調査には素直に応じ「本当に申し訳ないことをした」と話しているという。動機は不明だが、盗んだ金品は投資などに流用していた。逮捕はされていないが、警察には報告済み。盗んだ資金を銀行側に返すよう女性に求めることも検討している。 金融庁は16日、原因究明や再発防止策の報告を求める「報告徴求命令」を三菱UFJ銀に出した。同行は再発防止策として、各支店で管理していた予備の鍵を本部で一括管理し、鍵の使用に複数の行員が関与する新たなシステムを導入した。 ≪貸金庫 使用料年2万程度≫ 貸金庫は、銀行の店舗などに設置し、重要書類や貴重品、思い出の品などを盗難や災害から守る保管庫。利用者以外には中身を知られない。 利用者は使用料を支払って使う。銀行の貸金庫はB4サイズの書類が入る箱型が中心で、使用料は銀行によって違うが年間2万円程度。三菱UFJ銀行では、深さ5.7センチ、幅26.2センチ、奥行き40センチのタイプで年間1万6170円となっている。 現金だけではなく宝飾品、株券などの金品、パスポートなどの貴重品、写真や手紙など入れるものは利用者の自由。遺言書などを貸金庫に預けるケースもある。行員が立ち会って金庫を鍵で開ける手動型や、暗証番号を入力すると自動で金庫が運ばれてくる自動型などがある。