【Adoさんインタビュー】初のCDシングル発売! 「ターニングポイントになりそう」な2曲を収録
2024年10月24日、Adoさんが自身初となるCDシングルをリリース。今年は世界ツアーに、国立競技場での女性ソロアーティスト初のライブも開催。今最も勢いのあるアーティストの一人であるAdoさんのインタビューをお届けします。 Adoさん最新アーティストビジュアル 自らの22歳の誕生日当日に発売するCDシングルは、初音ミクとのコラボ楽曲『桜日和とタイムマシン with 初音ミク』、自ら作詞作曲を手掛けた楽曲『初夏』の両A面。それぞれの楽曲に込められた、Adoさんの「あの頃」と「大人になった今」への特別な思いを教えてもらいました。 ■Adoさん初のCDシングルは「ターニングポイントになる大事な2曲」を収録 ――今回リリースされるのはAdoさん初のCDシングル。配信では数々の人気曲を発表されているAdoさんですが「初のCDシングル」というところに、特別な思いはありますか? Ado 現代では珍しくなっているCDという形のあるもの、物理的なワクワクで私とみなさんのつながりを表せられたらいいな、という思いがあります。 今回のシングルに収録した2曲は、どちらも私のターニングポイントになりそうな大事な曲。この曲をリリースすることで、自分に深みが増すといいな、という願いを込めた曲でもあります。 ■『桜日和とタイムマシン with 初音ミク』は幼い頃の夢がかなった曲 ――収録されている2曲ともターニングポイントなんですね。まず、『桜日和とタイムマシン with 初音ミク』について、特別なところをお聞かせいただけますか。 Ado 私の人生においてとても大事な存在である初音ミク氏と一緒に歌えたことですね。ボカロは7歳くらい、初音ミクは11歳くらいからずっと聴いていて、これまでの様々な出会いのときも別れのときもずっと寄り添ってくれた存在です。そんな初音ミク氏と曲を出せることは特別で、幼い頃の自分が「こんなに素敵なことはない!」と喜んでいる気がします。 曲を書いてくださったまふまふさんは青春時代からずっと聴いていて、尊敬する歌い手さんのひとりなので、今回もご一緒できたのがとても嬉しい。『桜日和とタイムマシン with 初音ミク』は、幼い頃、10代の頃の私の夢がかなったような曲です。 そんな“あの頃”が、大人になるにつれて薄れていくさみしさのようなものを感じることは、BAILAを読まれている働く世代の皆様もあるんじゃないかな、と思います。私自身は「幼い頃に描いていた何かが薄れてしまっている」「自分がなりたくなかった大人になっている気がする」と感じる瞬間があります。でも、この曲を聴いたとき、「大人になる=輝きを失うこと、ではない」と思えたんですよね。 「落ち着いてしまったな」「がむしゃらさがなくなったな」なんて思うこともありますが、そんな今の自分のほうが、受け止められることが増えている。本当は“大人になってしまった”って、悔やむことではないのかなと思えるようになりました。だって、人は今を生きていますから。今は今で、“あの頃”と違った青春のようなものを、未来のために歩んでいけるはず。 そんなふうに過去と今の自分を受け止められる曲になっていると思います。 ■『初夏』は17歳からの成長も、変わらない部分も詰まった曲 ――もうひとつの曲『初夏』は、ご自身で作詞作曲された曲の初リリースですね。なぜ、このタイミングで発表することにしたのか教えてください。 Ado 実は以前から作詞作曲はしていましたが、世に出すことが怖くて、「期待に応えられるかわからない」と背を向けていました。名曲がたくさんあり、それを気軽に聴けるこの時代に、「私が曲を作ってもいいのだろうか……」と。 でも、最近になって「正解の曲が作れなくても私自身を見てもらいたい」「本質を見てもらいたい」「表面的な部分で私を決めつけてほしくない」という気持ちが高まってきて……。新しい姿を見せたいという思いも重なって、発表することにしました。 『初夏』は、17歳の頃にギターで作ったワンコーラスくらいの短いフレーズからできた曲です。発表にむけて作り直すことは、自分と向き合う機会にもなりました。自分自身の成長を感じられる部分が見つかったし、根本的な部分は変わっていないことにも気づきました。 一方で、大きく変わったのは口調ですね。大人になって自分を客観視する中で「これは私にも言えるな」と考えられるようになって、歌詞が誰かに語りかける形から、独り言に変化していきました。 変わっていないところもたくさんあります。ひとつ挙げるなら、サビの部分の歌詞の内容はほとんど変えていないです。Adoの変わらない部分はここだ、と言えます。ぜひ聴いてみてほしいです。 ――『初夏』は鬱々と落ち込んでいるとき、モヤモヤしているとき、絶望したときに寄り添ってくれる歌だと感じます。Adoさんはそのようなとき、どうやって自分を立て直しますか? Ado 寝て忘れます!(笑) 寝たら忘れてくれる頭がありがたいですね。夜考えないように、「朝考えるぞ!」という勢いで寝る。または言葉にする。曲にはできなくても、歌詞まがいの言葉に起こしてみるだけで、気持ちに寄り添えたり、客観視できたりして、落ち着きます。 自らが書いたものでも、誰かによって表現されたものでも、自分の心情が言葉という形になっているものを見ると、純粋に気持ちが楽になりますよね。迷いや曖昧だったものが形になることによって、自立してくれるというか……。訴えに変わったり、明確な悩みになったり、ふにゃふにゃしていた気持ちがしっかりと立つように感じたり。 ほかの誰かが書いた曲でも、そうやって同じ気持ちに触れることによって「私の気持ちは間違っていないんだ」って感じられることは心強いですよね。気持ちの居場所をもらうことで、実際に私も救われてきました。それこそまふまふさんの言葉や初音ミクの歌や声に助けられて、私は生きてきました。 私が作った曲も誰かにとっての気持ちの居場所になれたらいいな、と思います。 ――“歌い手”としてプロデュースされる楽曲と、ご自身が作詞作曲する楽曲とで、歌うときなどにどんな違いがあるのでしょうか? Ado どちらも「Adoとして歌う」という気持ちが大きいので、それほど変わらないかもしれません。ただ、作詞作曲した曲のほうがより「自分だな」と実感できるところはありますね。私は自分のことしか書けない。そういった点では、自分の考えをより訴えられるのは自分が書いた曲なのかな、と。 書きたい思いも、歌詞も、曲もまだいっぱいあります。これからどんどん曲を作って“私”を見せていきたいです。そのスタートとして、このタイミングで『初夏』を発表できたのは本当によかったです。 ■自分が得てきたものを人のために使える30代になりたい ――Adoさんは今22歳ですが、BAILA世代である30代にどのようなイメージを持っていますか? Ado 数年前までは、30代というと「何があっても、どんな場面で頼りにしても完璧に応えてくれる大人」「自分ひとりの力で立ち続けられるすごく立派な人」というイメージがありました。ちょっと他人事で、遠い未来のこととしてとらえていましたが、でも20代を少しだけやってみて、「あれ? 自分が思い描いていた20代と違うぞ?」ということがわかってきた。30代もきっとそうなんだろうと思っています。想像どおりの“すごい30代”に自分がなれるかといったら、きっとそうじゃない。 あえてどうなりたいかをお話しするとすれば、「誰かのためのサポートができる人生」になっているといいな、と思います。30代では生きてきた中で私が得てきたものを、誰かのために使える人間になれたらいいな、と思います。 【Ado】 あど 2002年生まれ。2020年にメジャーデビュー曲『うっせぇわ』が社会現象に。2022年には『ONE PIECE FILM RED』の主題歌と劇中歌を歌唱し、ロングヒット。2024年には世界ツアー『Wish』と、女性ソロアーティスト初の国立競技場ライブ『心臓』を成功させた。