パナソニックは「買い」か「売り」か 日立、ソニーに続く復活の試金石 浜田健太郎・編集部
同社の東原敏昭会長は著書で、「日立にはIT、OT(現場技術)、プロダクト(製品)いずれの分野にも、高い技術と経験、人財、ソリューションが蓄積している。このすべてを併せ持つ会社は世界でもあまりない」(『日立の壁』)と強調している。ソニーが自社の存在価値を「感動」と凝縮したのと同様、日立は「社会イノベーション」に集約。同社が幅広く手掛けるインフラ関連事業にデジタル技術という横串をさして、製品の売り切りが中心だったビジネスモデルから、ソリューションを顧客に提示して価値を提供する企業へと変革した。 経営学者で早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、ものづくりに強い日本企業から、今後、世界市場で大勝ちする企業が相次いで出てくるとの見方を示した。その理由について入山教授は、「インターネットとSNSが普及した『第1次デジタル革命』で日本は惨敗したようにみえるが、実はたいして負けていない。スマホが普及してその中のホワイトスペース(未開拓領域)をGAFAに取られただけだ」と指摘する。 その上で入山氏は、「第2次デジタル革命はIoT(モノのインターネット)の時代に突入し、あらゆるものがデジタル技術につながるので、ものづくりに強くないと勝てない。日立やパナソニックだけでなく、ソニーもまだ一部は製造業の会社であり、今後は日本のものづくりの力が復権する。ただし、その際にはデジタル化への転換は必須だ」と強調した。 (浜田健太郎・編集部) 11月5日(火)発売の週刊エコノミスト11月12・19日合併号の巻頭特集は、「日立、ソニー、パナソニック 復権の道のり」と題して、国内大手電機3社について、総力リポートします。日立は社会課題に対するソリューション、ソニーは人々に感動を届けるエンタメビジネスを「提供する価値」に定め、そこにリソースを集中することで、復活を遂げました。一方、松下幸之助を創業者とし、「ザ・日本企業」の代表格であるパナソニックは、事業再編に出遅れ、いまだ永い眠りから目覚めていません。特集では3社を比較しながら、DX、IoT(モノのインターネット)時代の日本の製造業のあり方を問います。ぜひ、書店やオンラインでお買い求めください。