自衛隊「特別防衛監察」から1年…相次ぐ不祥事に現役自衛官、弁護士らが“ハラスメント根絶”を訴えるシンポジウム開催
防衛省職員「任務遂行のためには規律維持が必須」
シンポジウムには現役の防衛省職員も出席した。 弁護団からの「特別防衛監察結果、有識者会議提言を受けこの1年で実施できたことは何か」という質問に対して、同職員は次のように回答した。 「ハラスメント防止月間(1月、7月)を設け、弁護士によるハラスメントの防止講演会を開いたほか、部外講師による教育の拡充、第三者による相談窓口の拡充など、実効性のある防止対策を進めている。加害者に対する態度の改善を促す再教育の実施、懲戒処分基準の適正化を図ることも予定している」 また、弁護団は自衛隊内の規律について定めた「服務ハンドブック」(幹部隊員用・服務参考資料)に「自覚に基づく積極的な服従の習性を育成する」と記されていることに触れ、「憲法13条の個人主義・人権尊重主義に反しないか」「上官や先輩によるハラスメントの精神的な温床になっていないか」と質問した。 職員は、「防衛省・自衛隊の任務遂行のためには、部隊の規律維持が必須。職務に照らして、職務に適正な範囲内で時には厳しい指導が行われることもある。一方で、ハラスメントは職務の適正な範囲を超えたものである。正しい認識を自覚させることを目的として各種教育、研修等に力を入れている」と述べた。
「しつけではなく法律に基づいてほしい」
9月23日、ロシア軍機が北海道・礼文島付近で領空侵犯を行い、航空自衛隊機が対処した。航空自衛隊は24時間態勢で空からの脅威に目を光らせている。全国で昼夜を問わず、職務や訓練にあたる防衛省・自衛隊の隊員・職員たち。人的基盤を強化するためにもハラスメントは看過できない。 鉄拳制裁のような旧日本軍の悪しき“伝統”や“体質”などが引き継がれていないか。ハラスメントなど無縁の洗練された組織になるためにはどうしていけばいいのか。 佐藤弁護士は「防衛省・自衛隊が自ら実態を明らかにする。自らできないのであれば、第三者機関に調査してもらい公表する」と体質改善の必要性を改めて訴えた。 さらに、職員(国家公務員)からの苦情相談なども定める「人事院規則」を例に挙げ、「(自衛隊は)しつけ(指導)といった法律以外の論理やルールを用いるのではなく、法律主義に基づき、法律を順守してほしい」と力説した。 ■榎園哲哉 1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。
榎園哲哉