習近平主席が突然の訪朝 歓迎ばかりではない中朝関係改善
中国の習近平国家主席が突然、北朝鮮を訪問し、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談しました。習氏は「朝鮮半島問題を政治的な解決と北朝鮮の努力を支持する」と述べ、米国との非核化協議に関与していく意向を表明、北朝鮮側は習氏を異例の厚遇で迎えたと伝えられています。今回の習主席の訪朝をどう見るか。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。
米国の影響を受ける中朝関係
中国の習近平国家主席は6月20、21日、北朝鮮を訪問しました。中国の国家主席が北朝鮮を訪問するのは14年ぶりでした。また、28,29日には大阪でG20(20か国・地域)首脳会合(サミット)が開催されるというタイミングだったこともあり、非常に注目されました。 中国と北朝鮮の関係は、第三国である米国から影響を受けています。 中国は米国と貿易問題で激しく対立しており、通商担当者による高官協議を重ねてきましたが合意に至らず、トランプ米大統領は習近平主席との首脳会談で決着をつけようとしましたが、これも実現しないまま、今月末のG20が近づいてきました。米中首脳会談の開催が決定されたのは6月18日の両首脳の電話会談でした。 しかし、大阪での米中首脳会談で結論が出る保証はありません。トランプ大統領は、会談で貿易問題が解決しなければ、中国からの輸入品のほぼすべてに追加関税を課す「第4弾」の制裁を実施すると表明しています。また、世界的な通信機器メーカーである中国の華為技術(ファーウェイ)にはすでに制裁を科していますが、その他の中国企業に対しても追加制裁を科すことを検討しています。 これに対し、中国では、トランプ氏があまりにも強引に「米国第一」主義を推し進めることへの反発が起こっています。中国がハイテク製品には欠かせないレアアース(希土類)を各国に供給していることを強調するのも、裏を返せば中国としてただ黙って米国の言いなりにはならないという気持ちがあるからではないかと思われます。 ともかく、習主席は大阪でのトランプ大統領との会談において米国の強大なパワーにさらされることは必至です。さらに、香港で「逃亡犯引き渡し条例」をめぐって大規模デモが発生したことも、習主席にとって不利な材料になります。 そこで出てくるのが、北朝鮮は中国にとって役に立つかという問題です。