「個で勝負して、技術で圧倒」 ドラフト候補7人擁する富士大が秋制覇…指揮官がぶち壊した“夏の常識”
八戸学院大に勝利し優勝を決めた9月14日の試合後、安田監督は「これまで個人は調整、調整で来ていたので、1回ぶち壊して強化する、鍛え上げるということをしてきました」と明かした。 「球のスピード、コントロール、コンタクト率、長打力、スイングスピード、打球スピード、ウエイトの数値、瞬発力…そのあたりをチーム全体で、時には個人的に指示をして強化してきました。個々の力があるのでこれまである程度任せていましたが、春はじけて、任せてダメなら僕が考えるメニューをやりましょうと。休む暇を与えなかったので、野手も投手も相当きつかったと思います」 大学の硬式野球部は、夏は遠征も行いつつオープン戦を多く組み、実戦をこなしながら調整するのが一般的だ。富士大も以前は実戦と個人が自身の課題を設定して調整する「課題練」をメインに据えていたが、今夏は安田監督が提示した練習メニューに全員で取り組んだ。 7月までは実戦は土日の午前中にホームグラウンドで試合を行うのみで、平日と土日の午後はひたすら反復練習をした。安田監督いわく、「冬の練習と夏の練習を一緒にやるイメージ」。体のケアは欠かさないとはいえ、トレーニング重視の冬の練習と実戦重視の夏の練習を同時並行で進めるとあって、「冬よりきついですよ」と不敵な笑みを浮かべた。
選手実感「きついことを乗り越えた先には勝利がある」
選手たちも「めちゃくちゃきつかったです」と口を揃えたが、それぞれが指揮官の思いに応えた。 9試合を終えて打率.378、3本塁打、9打点、14盗塁とキャリアハイに迫る数字を残しているプロ注目外野手の麦谷は、「4年間で初めて、室内練習場の300メートル走を主力も控えも関係なく走りました。きついことを乗り越えた先には勝利があると、後輩たちも分かったと思う」と話す。
5戦5勝で優勝に貢献したエース左腕の佐藤も、苦手としていた走り込みを強化したことで体力面の課題を克服。長いイニングを投げられるようになって2度9回完投勝利を挙げたほか、平均球速も約3キロアップした。佐藤は「正直体力的にはきつかったんですけど、自分としても納得した上で、『やってやろう』という反骨心を持って練習しました」と夏を振り返る。