「納得のはずが配偶者から慰謝料請求」レス夫婦の “公認不倫” に潜む危うさ
公認不倫で慰謝料の請求は原則NG
一般的には不倫が明るみに出れば、配偶者から慰謝料を請求されるリスクがあるが、公認不倫の場合はどうなるのだろうか? 「不倫が公認であれば、原則として慰謝料請求は認められません。なぜなら、不倫を認めているため、それによって侵害される利益がない、とみなされるからです」 と話すのは、リバティ・ベル法律事務所の弁護士である籾山善臣さん。公認しているのだから精神的損害はないと思われるため、「不倫や浮気を原因とする離婚」の慰謝料を請求することは難しいそう。しかし、これには例外もあるとのこと。実際の判例で、夫婦ともに互いの不倫関係を認める誓約書も作ったがその後、片方からの慰謝料請求が認められたケースがある。 「結婚する際に公認不倫の誓約書を作成していました。ただ、妻側は結婚したくて、言われたままに誓約書を渡したものだったんです。判例では、真意を反映したものではなく、弱みにつけ入り交付させたものだとして、夫へ300万円の慰謝料請求が認められました」(籾山さん、以下同) 公認不倫に至るには、意図せずそうなっていくということも多いという。パートナーの浮気に気づいたが指摘するタイミングを見失い、流れのなかで公認状態になってしまったという場合も。 「相手の不倫に対して心底納得しているわけではない、ということも多いのではないでしょうか。認めたはずの浮気に傷つき許せなくなり、浮気はやめてとお願いする。お願いされたパートナーは当然不満を感じる。夫婦の気持ちがバラバラに壊れていくことは容易に想像がつきます」
慰謝料請求をされてしまうケース
後になって公認が無効になり、慰謝料請求をされてしまうというケースは少なからずあるそう。 「無理やり、あるいは嘘をつかれて認めさせられた場合や感情的になっていた場合は、慰謝料が請求できることがあります。公認不倫の判決は細かな事実によって結果が大きく変動します。裁判となる場合、過去にさかのぼって夫婦の言動の変化や浮気相手とのことをつまびらかにしなくてはならず、精神的にもつらいものとなるかもしれません」 W不倫の場合、当人同士だけでなく、それぞれの配偶者から慰謝料を請求されるおそれもある。 「不倫はたとえ公認であっても、お金のみならず社会的信用を失います。例えば親族や知人が偶然、不倫現場を目撃すれば、批判の目を向けられることは避けられません。会社に知られ処分を受けたり、周囲と疎遠になってしまったりすることも考えられます」 公認でも非公認でも要は、「不倫は不倫」。リスクとは無縁ではないことを理解すべきということだろう。 三松真由美さん 恋人・夫婦仲相談所所長。夫婦仲、恋仲に悩む会員と「結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティーを展開。レス、ED、女性性機能に詳しい。恋愛・夫婦仲コメンテーターとしても活躍しており、講演、メディア取材、連載多数。 籾山善臣さん 弁護士。中央大学卒、2016年に弁護士登録。誰でも気軽に相談のできる敷居の低い弁護士を目指し、現在リバティ・ベル法律事務所に所属。離婚・男女問題、不倫・浮気、レスに関する繊細な事例も多く扱う。 <取材・文/中西美紀>