「北国の木」シラカバの家具が森の再生促す 北海道でメーカーら利用推進プロジェクト
家具産業が盛んな北海道旭川市や近郊で、メーカーや研究者が材料としてシラカバを活用する取り組みを続けている。身近に豊富にありながら、主な用途はパルプ用チップ。しかし家具素材として独特の魅力があるだけでなく、再生サイクルが早く、持続可能な森林経営も目指すことが可能という。(共同通信=星井智樹) この取り組みは「白樺プロジェクト」で、2018年11月に始動した。メンバーは研究者ら10人で、展示会で家具を紹介したりサイエンスカフェやワークショップを開いたりして発信するのが主な活動内容だ。 広大な自然が広がる北海道。だが輸出や生活用品製作のため戦後にナラやタモなどの良質な広葉樹が大量に伐採され、十分にあるとは言えない状況になってしまった。そこで北海道立総合研究機構林産試験場の秋津裕志さん(64)が研究の末、シラカバを代替材として利用し、広葉樹の成長を待ち森林を再生させようと知人らに呼びかけたのが、プロジェクトのきっかけだった。
白い樹皮が特徴のシラカバは北海道や中部以北の本州に分布する、北国の代表的な木。生命力が強く、荒れ地で真っ先に育つ「パイオニアツリー」の一つで成長が早いが、60年程度で朽ち、幹が直径30センチほどにしかならないため、柔らかい木とのイメージを持たれてきた。 プロジェクト代表理事で、東川町で家具メーカーを経営する鳥羽山聡さん(55)は当初「シラカバで家具が作れるのか」と不安だった。だが強度試験を通じ、十分に利用可能だと分かった。それに加えて絹のような光沢があり、ナラなどと比べて優しい印象で、素材としての魅力を感じた。これまで宿泊施設などにテーブルやトレーなどを納め、高い評価を得ている。 秋津さんによると、シラカバを含むカンバ類は推計で北海道の森林の約11%を占める。工事後の道路脇のように日当たりが良く目につく場所で育ちやすい。だから人の手で生育を促すことが容易で、伐採のために奥山まで立ち入る必要がなく、低コストで済む。さらには樹液から化粧品、樹皮から籠など、丸ごと利用が可能な点も魅力だ。
「ゆくゆくは自分たちが育てた木で家具が作れる。楽しみだ」と鳥羽山さん。現在のメンバーは50~60代がほとんどといい「プロジェクトを通して若い人に刺激を与えたい」と話している。