トラウマ級の悲劇…史上最も胸糞が悪い学園モノ日本映画(3)恐ろしすぎる…抜群の構成と展開で惹きつける傑作
エンターテイメント作品の設定として定番の学園モノ。同年代の人間が過ごす学校という場所には、それだけ多くの出来事が起こりやすいということだ。これまでも友情や恋愛に限らず、SF、アクション、ホラーなど、多くのジャンルの作品が生み出されてきた。そこで今回は、学園で悲劇が起こる映画を紹介する。第3回。(文・ニャンコ)
『ソロモンの偽証』(2015)
原作:宮部みゆき 監督:成島出 脚本:真辺克彦 出演:藤野涼子、板垣瑞生、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、黒木華、小日向文世、尾野真千子 【作品内容】 原作は、宮部みゆきによる長編推理小説。週刊文春ミステリーベスト10及び、「このミステリーがすごい!」には第2位となった話題作である。2016年には韓国の放送局(JTBC)に、2021年にはWOWOWにて上白石萌歌主演でテレビドラマ化され話題を集めた。 本作は、未成年である少年少女たちが、学校内で起きた同級生の転落死の謎を、生徒同士で校内裁判し、追求するというストーリー。 『八日目の蝉』(2011)の成島出監督によって2015年3月に『ソロモンの偽証 前篇・事件』。同年4月に『ソロモンの偽証 後篇・裁判』で公開され、第40回報知映画賞、日刊スポーツ映画大賞で作品賞を受賞した。 出演した生徒役達は主人公・藤野涼子(役名・芸名共に同じ藤野涼子)をはじめ、本作でデビュー作となった俳優が多数おり、藤野はこの年の新人賞を多数受賞した。 【注目ポイント】 学校という閉鎖的かつ限られた空間内であるため、どうしても証拠や証言に偏りが出てしまうのが事実であり、だからこそ事件の真相がわからなくなってしまう。 そもそも本来であれば、未成年だけで学校裁判を行う行為自体が不自然であり、これは一種の集団パニックである。まさに法律を無視した私刑と言っても過言ではない。 そんな私刑を未成年だけで行うことに、ある種の恐怖を感じる。 社会経験が不足し、また法律知識にも乏しい未成年である少年少女たちが、真実を追い求めるために校内で裁判を行う姿に胸が打たれると同時に、「これからどのような展開になるんだろう?」という期待を抱かせる。 特に柏木(望月歩)の死の真相に迫るため、三宅(山本舞香)と神原(板垣瑞生)のどちらの証言を信じるべきなのか、という選択を迫られた際、「三宅の証言には根拠がない」という理由だけで、主人公が神原を信じ切ってしまうあたりが、未成年特有の経験や知識不足を表している。 経験や知識のある大人であれば、神原の証言だけで真相を判断するわけにはいかない、と気づくはずであるが、それでは面白い展開にはならない。 未成年特有の経験や知識不足を、物語を面白くするために不可欠な要素として活かしており、ストーリーテリングの妙に舌を巻く。
ニャンコ