尾上菊之丞が茂山逸平と挑戦し続けてきた「逸青会」にかける情熱とは?
日本舞踊家の尾上菊之丞と狂言師の茂山逸平が、2009年に舞踊と狂言のジャンルを超えた可能性を追求するべく始めた「逸青会」が15周年を迎える。これを記念して8月18日から1週間にわたって行われる11公演には松本幸四郎をはじめとした豪華ゲストが出演。尾上菊之丞が、この二人会に込めた思いを語る 尾上菊之丞さんの写真をもっと見る
■コラボレーションに見出した可能性 ──茂山逸平さんと「逸青会」を始めることになったきっかけを教えてください。 尾上菊之丞(以下菊之丞): 逸平さんとはお互いに面識はありましたが、初めて舞台をご一緒したのは2001年12月に明治座で行われた「伝統芸能の若き獅子たち」という公演のときでした。それからは同じ公演に、舞踊と狂言というそれぞれのジャンルで出演する機会が時々ありました。ちょうどその頃、僕自身には他ジャンルとコラボレーションする企画が増えてきて、これが目を引くことはあっても、なかなか思うようにならず難しい面もあると思っていました。その一方で、面白さと可能性があることも感じていて、漠然とではありますが逸平さんとなら何かやれるのではないかという思いがありました。そして2008年頃にどちらともなくやってみようかということになり、とりあえず3年は絶対に頑張ること、しっかり四つに組んで作品を創ること、お互いの領域でできるできないを判断しないこと、古典と新作の両方をきちんとやることにトライしていこうと決めて始めました。 ──実際に茂山逸平さんとコラボレーションをして、どんな手応えがありましたか? 菊之丞:初回に選んだのは『茶壺』でした。長唄に曲もありますし、狂言の『茶壺』と歌舞伎舞踊の『茶壺』をアレンジして、模索しながら演りました。2回目の時、初めて本を書いて曲を作ったのが『千鳥』です。逸平さんから狂言にある古典の作品を元にしようという提案でいくつか演目を挙げてもらって、その中から一番踊りにしやすくて、面白くなりそうなものとして『千鳥』を選んで作りました。当時の(二世茂山)千之丞先生からは「おもろいな」とおしゃっていただいたり、今の(十四世茂山)千五郎さんや(三世茂山)千之丞さんが「元の狂言とは違う面白さがある」と言ってくださったりして、それが我々にとって大きな自信になって、もっと演りたいと互いに思いました。そして4回目からは古典ではなく、新作を書くことにも挑戦しました。 ──菊之丞さんから見た茂山逸平さんはどういう方ですか? 菊之丞:ひと言で言えば、“自然体”な方です。僕自身は、スイッチを入れてかっこつけているような感覚がありますが、逸平さんの自然体な感じは、自分にはないものだとすごく感じています。