ウクライナ特殊部隊、北東部ボウチャンシクの工場からロシア軍部隊を掃討
ロシア軍は5月10日、ウクライナ北東部ハルキウ市北方の国境を越えて新たな地上侵攻を始めた。ロシア軍部隊はウクライナ側の手薄な防御を突いて南へ進撃し、国境から5kmほどにあるボウチャンシク市の大半を瞬く間に制圧した。ボウチャンシクは2022年2月の戦争拡大前の時点で1万7500人ほどが住んでいた小さな都市だ。 ウクライナ軍部隊と激しい戦闘を繰り広げながら、ロシア軍部隊は1カ月後、荒廃する市の中心部にある要所を押さえた。頑丈なコンクリート製建物30棟が立ち並ぶボウチャンシク連動機械(アグレガート、ウクライナ語読みでは「アフレハート」)工場だ。 ロシア側はこの工場を、すぐ南を流れるボウチャ川を渡る部隊を掩護する基地として利用できそうだった。ところが、実際にはそこはロシア軍にとって「罠」になった。工場のすぐ外側で前線を維持したウクライナ軍は反撃を仕掛け、工場の北数ブロックまで前進し、工場とそこにいる部隊をロシア軍の主力部隊から切り離した。 4カ月にわたる攻防になったものの、ウクライナ国防省情報総局(HUR)の特殊部隊が24日、工場に残っていた最後のロシア軍人員をついに排除した。 情報総局は、特殊部隊が「建物が密集する状況下で敵と接触戦闘を重ねながら、工場の建物をしらみつぶしに掃討していきました。場合によっては白兵戦になりました」と作戦の様子を説明し、「ボウチャンシク連動機械工場の敷地を完全に解放し、同社のすべての建物から占領者を除去しました」と報告している。ロシア側の人員は殺害したほか、一部は捕虜にしたという。 情報総局が掃討作戦を開始した時点で、工場内に何人くらいのロシア兵らが残っていたのかは不明だ。当初は30棟の建物に数百人が散らばっていたともみられていた。占拠部隊は工場の北にいる味方の砲兵から火力支援を受けていたほか、小型のドローン(無人機)で物資を補給されていたと伝えられる。