JALとANAが呉越同舟、福岡空港の増便対策の切り札に…「グラハン」車両を共同使用
2本目の滑走路の供用開始が来年3月に迫っている福岡空港(福岡市博多区)では、増便に向けた航空機の受け入れ業務の対策が急務となっている。その切り札の一つが、手荷物の積み下ろしなどを行う地上業務「グランドハンドリング(グラハン)」の車両の共同使用だ。日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)が運用を本格化させ、業務効率化を進めている。両社による共同使用は全国の空港で唯一だ。(饒波あゆみ) 【動画】深夜に行われている福岡空港第2滑走路の舗装工事
手荷物を運搬
福岡空港の国内線の駐機場で9月、JALのスタッフが、ベルトコンベヤー付きの車両「ベルトローダー」を使って、乗客の手荷物を降ろしていた。車両にはANAのロゴが入っている。作業を終えると、駐機場周辺に新設された置き場に車両を戻していた。
グラハンを担うJAL福岡空港支店の河野宏之さん(42)は「ベルトローダーの移動時間が短縮され、車両を効率的に使えるようになった」と話す。
福岡空港で共用化を進める背景には、特有の事情がある。アジア各地からの玄関口で国内便も多い福岡空港は、国内有数の混雑空港となっている。一方、敷地(約346ヘクタール)が狭く、市街地にあり拡張も難しいため、約2000台に上るグラハン車両の置き場は満杯状態となっている。
さらに、同空港は羽田空港(約1515ヘクタール)などとは違い、両社の航空機が同じ駐機場を使う。このため、グラハンでも同じような車両を使用するのに、離れた置き場から自社の車両をそれぞれ移動させていた。往復約2キロを移動することもあったという。
2023年度の航空機の発着回数は約17万9000回(回転翼機除く)で、滑走路が増設されると、「滑走路処理能力」は最大で年間21万1000回まで増やせる。そのため、車両の効率的な運用が必要となった。
スタッフ負担減
そこで空港運営会社「福岡国際空港(FIAC)」を中心に、航空会社、グラハン事業者などは21年度から年数回に分けて共用化の試験を実施してきた。現在はJALとANAが本格運用に乗り出し、ベルトローダーと航空機牽引(けんいん)車を計12台出し合って、FIACが設けた駐機場そばの置き場に止めて共用している。