英国EU離脱など、”○○ショック”が起きても惑わされない資産形成が大事
英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票において、離脱派が勝利したことにより市場は大混乱に陥りました。老後資金をつくるために「投資」という方法で資産づくりをしていた方の多くは驚くとともに非常に不安な気持ちになったのではないだろうかと思います。 今回のような市場の大きな変動をよく“○○ショック”と言いますが、今回の変動を“Brexitショック”というかどうかはともかく、価格が極めて短期間に上下したことだけは確かです。しかしながら、こうした類の“○○ショック”というのは、短期的には大きく変動はするものの長期的に見ると前の水準に収れんしていくことがほとんどです。したがって、結論から言えば多くの場合、あまり慌てる必要はないのですが、そうは言っても目の前で株価が大きく下げていく様子を目の当たりにすると心中は決しておだやかでいることはできません。 そこで今回は、一体どうしてこういう事態が起きるのか? そしてそれに対して、資産運用をおこなっている人はどういうスタンスでいれば良いのかということについてお話しをしたいと思います。まず大前提として考えておくべきこと、それは「経済」と「市場」は必ずしも一致するものではないということです。
経済と市場は別物と心得るべし
はじめに経済から考えてみましょう。英国がEUを離脱するからといって、英国がEU市場全体から締め出されるわけではありません。“離別”は“決別”ということではないからです。EU加盟国にとって、英国への輸出は相当な金額にのぼっており、彼らにとって英国はアメリカを上回る貿易相手なのです。そんな関係ですから、今回の離脱によって貿易そのものが大幅に縮小していくということは双方にとって良い結果をもたらすことにはなりません。それはどちらもよくわかっていますから、今後は両者が話し合いながら互いに有利な結論を導いていくように調整の努力をしていくことになるでしょう。 先行きの経済動向がどうなっていくか現時点では読めない部分が多いことも確かですが、リーマンショックの時のような金融危機ではなく政治的な決定ですから、それによって経済全体が直ちに大きく悪化をしていくということではありません。今回のEU離脱を我々の身近な例にたとえて言えば、英国はそれまで入会していた“EUスポーツクラブ”を脱会したようなものです。これからEUスポーツクラブを利用するには会員よりも高い利用料を払わなければなりません(関税)が、ビジターとして利用できないわけではありません。それにEUスポーツクラブからは抜けたけれど、たとえばNAFTA(北米自由貿易協定)という新しい、そしてもっと利用料金の安いスポーツクラブに入れるかもしれません。当面は不透明ですが、現時点で過度な悲観をする必要はないと思います。 では次に市場を考えてみましょう。経済がただちに悪化するかどうはわからないのになぜ市場は大きく下落したのでしょうか。ここからが「経済」と「市場」の違うところです。本来であれば市場は経済社会の動きを反映する鏡のようなものですから両者は同じように動くというのがあるべき姿でしょう。ところがやっかいなことに市場にはそれに参加する多くの人たちの気分や心理が影響を与えます。さらにやっかいなことに市場は常に先行きが不確実ですから、不安心理や楽観心理は時として増幅されることがあるのです。 今回の例で言えば、国民投票の数日前から残留派が優勢だという報道でした。このためその予想を織り込んで市場は少しずつ上がっていたのです。ところが実際にふたを開けてみると人々の事前の予想とは違う結果になりました。これによって市場に参加している人たちの間に大きな狼狽が広がり、またたく間に大きな暴落を引き起こしたというわけです。