どんなに儲かっていても…すべての企業に「新規事業開発」が必要な理由【中小企業診断士が解説】
新規事業開発をおこなう意義
[図表4]では、1つの事業に着目して、時間の経過とともに辿る推移を見てきました。1つの事業は、ある1時点では図で示す推移のなかでどこか1か所にあるはずです。企業が複数の新規事業を次々と実施していれば、はじめたばかりの新規事業は「I」の段階にありますが、先行してはじめている新規事業は「II」や「III」の段階に進んでいるものもあるでしょう。 自社の柱となっている既存事業は、「III」や「IV」の段階にあるはずです。このような自社のさまざまな既存事業や新規事業をまとめて、1つのPPMのチャートにあらわしたものが次の[図表4]です。 この企業はA~Iの9つの事業をおこなっていることを示したものです。図中にある左回りの矢印は、[図表3]に示した、事業の辿るライフサイクルの方向を示しています。AからIのうち、G・H・Iの3事業は成熟期から衰退期にありますので、既存事業と見られます。EやFも、まさに花開いて活気のある事業であり、これからの自社を支える既存事業です。 これに対してA~Dは新たにはじめた事業であり、いずれ花形ビジネスとなって将来に自社を支えることが期待される事業です。これらの新規事業は、まだ十分に利益を生み出しておらず、投資のほうが優っている状態かもしれません。その費用は既存事業が生み出した利益によって賄われます。 このように、既存事業が生み出した利益を活用して次々と新規事業を立ち上げ、事業の成長に投資することによって、既存事業が衰退しても、それに代わって新規事業が成長して次の世代の会社を支えることができるのです。 多くの新規事業を立ち上げ、その多くが成長すれば、企業全体としてはさらに成長し発展できます。ここに企業が新規事業開発をおこなう意義があるといるでしょう。「すべての企業は新規事業開発をおこなう必要がある」ともいえるのではないでしょうか。 中野 正也 株式会社グローバル事業開発研究所 代表取締役 ※本記事は『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
中野 正也